食べて痩せる高エネルギーフラックスって痩せるの?

最近「食べて痩せる」ってよく聞くけど、本当に食べる量を増やしたほうが痩せるの?

ようじゅ

今回は「よく食べて、よく動く」というダイエットについて解説します。食べる量だけを増やす話とは、分けて考えましょう

ダイエットを始めると、食べられる量の少なさにうんざりすることがある。

その一方で、「もっと食べたほうが痩せる」「運動して、しっかり食べよう」といった話を聞くと、どちらが正しいのかわからなくなる。

結論をいうと、運動量を増やして食べられる量を確保する方法は、ダイエットを続けやすくする選択肢になる。

ただし、食べるだけで脂肪が落ちるわけではないし、たくさん運動するには時間も労力もかかる。

「食べて痩せる」をどう考えるか
  • 「食べて痩せる」は、活動量も増やしてカロリー赤字を保つなら成り立つ
  • 食べられる量が増えることで、空腹への対処や栄養の確保がしやすくなる
  • 運動による体づくり・気分・睡眠へのメリットも期待できる
  • 食費や運動の負担に見合うかを考え、続けられる範囲で取り入れる
ようじゅ

自分は食べる量をかなり減らすダイエットも、運動量を増やしてたくさん食べるダイエットもやったことがあります。個人的には後者のほうが楽ですが、誰にとっても続けやすいとは限らないと思っています

目次

「食べて痩せる」には、違う2つの話がある

まず、「食べて痩せる」という言葉だけで判断しないほうがいい。

食べる量だけを増やす話と、動く量も増やす話では、カロリー収支がまったく違うからだ。

食べる量を増やすだけで、脂肪が落ちるわけではない

一つ目は「食べなさすぎて代謝が落ちているから、もっと食べれば痩せる」という話だ。

減量に伴って消費カロリーが下がり、それまでの食事量では体重が落ちなくなることはある。

しかし、そこで食事を増やした分以上に消費カロリーが増えるとは限らない。

現在の摂取と消費が釣り合っているなら、消費が変わらないまま食事を増やすとカロリー収支はプラスになる。

ようじゅ

食事量を見直すこと自体が悪いわけではありません。ただ、「代謝が落ちているから食べれば脂肪が落ちる」と、そこまで話を飛ばすことはできないわけです

毎日3食食べるかどうかと、カロリー赤字を作れているかどうかも別の話である。

よく食べて、よく動く「高エネルギーフラックス」

今回取り上げるのは、もう一つの「活動量を増やして、その分食べられる量も増やす」という方法だ。

食べる量と消費する量がともに多い状態は、高エネルギーフラックス、あるいはハイエネルギーフラックスなどと呼ばれる。

たとえば、次の2つを比べてみる。

比較項目少なく食べて、あまり動かない多く食べて、よく動く
1日の摂取カロリー1,500 kcal2,500 kcal
1日の消費カロリー1,800 kcal2,800 kcal
カロリー収支−300 kcal−300 kcal

どちらも300 kcalの赤字だが、後者のほうが1日に食べられる量が多い。

この数字は仕組みを説明するための例であり、全員に2,500 kcalの食事や2,800 kcalの消費を勧めているわけではない。

ようじゅ

「食べるほど痩せる」というより、「動く量を増やせば、食事をそこまで削らずに赤字を作れる」という話です。この違いはかなり大事です

代謝が高くなり、空腹感が減った研究はある

高エネルギーフラックスで、安静時代謝や空腹感に好ましい変化が見られた研究はある。

ただし、それをそのまま「同じカロリー赤字でも、こちらのほうがたくさん痩せる」と読むことはできない。

肥満の成人6人を対象に、減量後の低エネルギーフラックスと高エネルギーフラックスを比較した予備的な研究。

同じ参加者が、順番をランダムにして両方の条件をそれぞれ5日間経験した。どちらも摂取と消費が釣り合うように設定されている。

比較項目低エネルギーフラックス高エネルギーフラックス
生活・運動座りがちな生活1日約500 kcal分の運動を追加
摂取量の設定安静時代謝×1.35安静時代謝×1.7
測定された安静時代謝の平均1,847 kcal/日1,926 kcal/日

安静時代謝は、高エネルギーフラックスの条件で平均79 kcal高かった。[1]

また、高エネルギーフラックスの条件では、1日の終わりに感じる空腹感が低く、1日を通じた満腹感も高かった。[1]

ようじゅ

正直、これだけ運動して食べる量も増やして、安静時代謝の差が79 kcalと聞くと、その数字だけを目的に頑張るかは微妙だと思います。それより、空腹が楽になるほうに魅力を感じます

ここで比べているのは、すでに減量した人が短期間それぞれの生活を送ったときの反応だ。

6人という小規模な研究であり、長期の減量量やリバウンドの差を確認したものではない。

高エネルギーフラックスを選ぶ理由は、「代謝が上がって特別に痩せる」よりも、その生活のほうが続けやすいかどうかに置いたほうがいい。

メリット①:食べられる量が増え、食欲に対処しやすくなる

食事を減らすたびに空腹がつらくなる人にとって、食べられる量が増えることは大きなメリットだ。

しかも、活動量を増やしたときの変化は、消費カロリーだけにとどまらない。

健康な成人16人が、代謝チャンバーという消費エネルギーを測定できる部屋で、活動量と食事量を管理された条件を経験した研究。

歩く量を変えてエネルギーフラックスを低・中・高の3段階にし、カロリー収支が釣り合う条件や、赤字・余剰になる条件などで食欲を比較した。

高エネルギーフラックスと比べると、低エネルギーフラックスではGLP-1が低く、カロリー制限や過剰摂取の条件ではグレリンが高かった。[2]

グレリンは食欲を促す方向、GLP-1は食欲を抑える方向に働くため、この2つを同じ「空腹ホルモン」として扱ってはいけない。

この研究ではホルモンだけでなく、主観的な食欲も評価されており、低エネルギーフラックスでは食べたい気持ちが強く、収支が釣り合う条件では空腹感も強かった。[2]

ようじゅ

ホルモンの数値が変わったから、現実のダイエットでも必ずうまくいく、とまでは言えません。ただ、本人が感じる食欲にも違いが出ているのは、実践を考えるうえで参考になります

もちろん、これも短期間の実験なので、何か月も続けたときの減量効果まで決まったわけではない。

自分にとって、空腹に耐えやすい方法を選べばいい

運動するとお腹が空く人もいるため、運動さえすれば食欲が消えるわけではない。

それでも、運動による消費を増やして食事量に余裕を作ったほうが、食事だけを削るより楽に続けられる人はいる。

ようじゅ

自分は1,700 kcalくらいで減量したことも、運動量をかなり増やして3,000 kcal近く食べながら減量したこともあります。やっぱり食べられる量が多いほうが、空腹は楽だと感じました

これは自分の実感であり、その摂取量が誰にでも合うという意味ではない。

毎回「食べられる量が少なすぎる」と感じて挫折するなら、食事をさらに削る前に、活動量を増やす余地を考えてみてもいい。

メリット②:ビタミンやミネラルを確保しやすい

高エネルギーフラックスには、必要な栄養素を食事から確保しやすくなる利点もある。

理由はシンプルで、食べられる量が多いほど、いろいろな食品を食事に組み込みやすいからだ。

米国の全米栄養健康調査(NHANES)に参加した成人4,015人のデータを解析した研究。

身体活動量と食事内容を調べ、摂取と消費が釣り合うと仮定して食事量を補正したうえで、微量栄養素の摂取量を比較した。

活動量が多い人では、ビタミンA・B12・C・K・銅を除く微量栄養素の摂取量が、活動量の少ない人より多かった。

研究で用いた基準に届かなかった栄養素は、活動量の少ない人で19種類中6種類、多い人で19種類中5種類だった。[3]

これは減量中の人に高エネルギーフラックスを実践させた試験ではなく、調査データを補正して分析した結果である。

それでも、少ないカロリーの中ですべての栄養素をそろえようとするより、食べられる量に余裕があるほうが食事を組みやすい、という考え方には合っている。

ようじゅ

なんだか難しい名前がついていますが、「食べる量が増えれば、摂れる栄養素も増えやすい」という話です。逆に、追加した分が全部同じお菓子だったら、栄養が勝手に整うわけではありません

食べる量に余裕ができたら、主食だけでなく、肉・魚・卵・大豆製品、野菜、果物などを組み合わせることに使いたい。

栄養が整うことで、食欲も変わるのか?

栄養素の充足が食欲に関係することを示唆した研究もある。

ただし、「ビタミンやミネラルが足りないから食べすぎる」と、すべての空腹を説明するのは無理がある。

サプリメントを普段から使う人と使わない人の比較と、マルチビタミン・ミネラルのサプリメントを使う15週間の減量試験を行った研究。

普段からサプリメントを使っていた女性では、食行動の抑制が外れやすい傾向と、空腹感のスコアが低かった。

減量試験では、サプリメントを摂った女性で食欲の評価が改善した一方、体重減少量に群間差はなかった。

普段の利用者同士の比較には、サプリメント以外の生活習慣が関わっている可能性もある。

また、サプリメントの試験結果だけで、高エネルギーフラックスによる食欲改善の仕組みが証明されたわけではない。

ようじゅ

ここから「全員マルチビタミンを飲めば痩せる」とはなりません。栄養をきちんと確保することには意味がありそうですが、サプリを飲むことと減量できることは別です

今回の話では、食事を削り続ける以外にも、栄養を確保しながらカロリー赤字を作る方法がある、と考えればいい。

メリット③:運動そのものの恩恵を受けられる

個人的には、高エネルギーフラックスの魅力は、運動そのもののメリットを得られることにもあると思う。

運動を取り入れれば、体重を落とすだけでなく、体力や体組成、気分、睡眠といった面にも目を向けられるからだ。

同じくらい痩せても、「健康になった」という実感が違った

過体重または肥満の、普段あまり運動をしない閉経後女性を対象にしたランダム化比較試験。平均年齢は約60歳で、生活の質の解析には214人のデータを用いた。

食事制限中心、運動と軽い食事制限の組み合わせ、体重を維持する対照群を比較し、16週後に評価した。

比較項目食事制限中心運動+軽い食事制限
食事の設定1日500 kcal減らす1日250 kcal減らす
運動の設定普段の活動量を維持有酸素運動と筋トレなどを週4時間
平均体重減少量4.9 kg5.5 kg

運動群の運動による消費は、1日平均約350 kcalと見積もられていた。[5]

どちらも体重は落ちたが、「1年前と比べて自分の健康状態がどう変わったか」という評価は、運動を取り入れた群のほうが大きく改善した。[5]

一方、生活の質に関するほかの項目すべてで有意な差が出たわけではない。

ようじゅ

体重計の数字が同じくらい減っていても、本人がどう感じるかは同じとは限りません。「痩せたけど、生活はずっとつらい」より、体を動かして調子がよくなったと感じられるほうが、自分はうれしいですね

筋トレは、減量中の体組成にも役立つ

体重だけでなく、脂肪とそれ以外の組織がどれくらい減ったかを考えると、筋トレを取り入れる意味はさらに大きい。

過体重または肥満の人を対象に、食事制限だけの減量と、食事制限に筋トレを加えた減量を比較したメタ分析。

体重の減少量に明確な差はなかったが、筋トレを加えると脂肪量の減少が大きく、除脂肪量の減少が抑えられた。

除脂肪量は筋肉だけを意味する指標ではないが、体重の変化だけでは見えない違いがあったということだ。[6]

ようじゅ

ただ体重を軽くしたいというより、脂肪を落として体を整えたい人が多いはずです。そう考えると、運動を「何kcal消費したか」だけで評価するのはもったいないと思います

気分や睡眠へのメリットもある

うつ病の臨床的な基準を満たす参加者を対象とした218研究・14,170人のデータをまとめたネットワークメタ分析。

ウォーキングやジョギング、ヨガ、筋トレなどで、対照条件と比べて抑うつ症状の改善が認められた。

研究の確実性には限界があるものの、運動をカロリー消費以外の面から評価する根拠になる。[7]

不眠症状のある成人女性を対象とした16研究をまとめ、運動が睡眠に与える影響を調べたメタ分析。

運動によって、質問票で評価した睡眠の質が改善した。

この研究は、運動によって睡眠が改善した結果、減量量まで増えたことを確かめたものではない。[8]

それでも、体重を落としながら気分や睡眠にもよい変化を期待できるなら、運動を取り入れる理由としては十分に魅力がある。

ようじゅ

運動なしでも痩せることはできます。ただ、できる範囲で運動もしたほうがいい、というのが自分の考えです。高エネルギーフラックスという名前にこだわらなくても、このメリットは受け取れます

ただし、食費と運動の時間はかかる

高エネルギーフラックスが自分に合うかは、得られるメリットと負担を合わせて考えればいい。

たくさん食べるには食費がかかり、活動量を増やすには時間や労力が必要だからだ。

食事を少し減らすほうが簡単な人もいれば、運動して食べる量を確保するほうが楽な人もいる。

じゃあ、できるだけたくさん運動して、たくさん食べたほうがいいの?

ようじゅ

そこまで極端にする必要はありません。食べるための運動が義務になって、毎日それに追われるなら、続けやすくするという目的から外れてしまいます

運動量を急に増やして疲労や痛みが出たり、運動時間を確保するために睡眠を削ったりするなら、量を見直したほうがいい。

「メリットがある」と「多ければ多いほどいい」は別である。

まずは、続けられる活動を少し足してみる

取り入れるなら、最初から大幅に食事量と運動量を増やすより、今の生活に続けられる活動を足すところからでいい。

  • 歩く時間を増やすなど、無理なく続けられる活動を選ぶ
  • 筋トレも取り入れ、体重だけでなく体づくりを意識する
  • 活動量に合わせて食事量を調整し、カロリー赤字を保つ
  • 体重の推移だけでなく、空腹感・疲労・時間の負担も確認する

運動した分以上に食事が増えて赤字がなくなれば、減量は進まない。

反対に、空腹が楽になり、運動も無理なく続けられるなら、その人にとって使いやすい方法になっている。

ようじゅ

自分にとっては、少ない食事を我慢するより、運動して食べるほうが楽でした。運動の時間を取れて、続けられそうな種目がある人は、一度試してみてもいいと思います

まとめ:痩せる効率より、ダイエットの続けやすさで考える

高エネルギーフラックスは、食べる量と活動量をともに増やして、カロリー収支を管理する考え方である。

研究はまだ限られているが、空腹への対処や栄養の確保、運動そのものの恩恵という点では、取り入れる理由がある。

高エネルギーフラックスのポイント
  • 「食べて痩せる」は、活動量も増やしてカロリー赤字を保つなら成り立つ
  • 食べられる量が増えることで、空腹への対処や栄養の確保がしやすくなる
  • 運動による体づくり・気分・睡眠へのメリットも期待できる
  • 食費や運動の負担に見合うかを考え、続けられる範囲で取り入れる

一方で、代謝を特別に高く保てる魔法でも、誰もが大量に食べられるダイエットでもない。

「もっと効率よく痩せるため」より、「自分が減量を続けやすくするため」の手段として考えると使いやすい。

ようじゅ

毎回、食べられる量の少なさで挫折しているなら、「もっと削る」以外の方法も考えてみてください。よく動いて、その分しっかり食べるほうが合う人もいると思います

参考文献

1. Paris HL, et al. Increasing energy flux to decrease the biological drive toward weight regain after weight loss – A proof-of-concept pilot study. Clinical Nutrition ESPEN. 2016;11:e12–e20. doi:10.1016/j.clnesp.2015.11.005. 論文リンク

2. Hägele FA, et al. Appetite Control Is Improved by Acute Increases in Energy Turnover at Different Levels of Energy Balance. J Clin Endocrinol Metab. 2019;104(10):4481–4491. doi:10.1210/jc.2019-01164. 論文リンク

3. Heydenreich J, Melzer K, Flury C, Kayser B. Low Energy Turnover of Physically Inactive Participants as a Determinant of Insufficient Mineral and Vitamin Intake in NHANES. Nutrients. 2017;9(7):754. doi:10.3390/nu9070754. 論文リンク

4. Major GC, et al. Multivitamin and dietary supplements, body weight and appetite: results from a cross-sectional and a randomised double-blind placebo-controlled study. Br J Nutr. 2008;99(5):1157–1167. doi:10.1017/S0007114507853335. 論文リンク

5. van Gemert WAM, et al. Quality of Life after Diet or Exercise-Induced Weight Loss in Overweight to Obese Postmenopausal Women: The SHAPE-2 Randomised Controlled Trial. PLoS One. 2015;10(6):e0127520. doi:10.1371/journal.pone.0127520. 論文リンク

6. Binmahfoz A, Dighriri A, Gray C, Gray SR. Effect of resistance exercise on body composition, muscle strength and cardiometabolic health during dietary weight loss in people living with overweight or obesity: a systematic review and meta-analysis. BMJ Open Sport Exerc Med. 2025;11(3):e002363. doi:10.1136/bmjsem-2024-002363. 論文リンク

7. Noetel M, et al. Effect of exercise for depression: systematic review and network meta-analysis of randomised controlled trials. BMJ. 2024;384:e075847. doi:10.1136/bmj-2023-075847. 論文リンク

8. Qiao Y, et al. Effects of exercise on sleep quality in women – A systematic review and meta-analysis. J Sci Med Sport. 2025;28(4):274–281. doi:10.1016/j.jsams.2024.11.015. 論文リンク

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次