流行の「高めの心拍数でのウォーキング」は本当に痩せる?ダイエット効果を科学的に検証

ようじゅ

今回は視聴者から来た質問に答えてみる回です

最近話題の、ちょっと高めの心拍数でそれなりの時間歩くダイエットが体脂肪率減に効くのか知りたいです!いつも減量で走ったりすると筋肉を落とし過ぎてしまうので、流行りの歩くダイエットが本当に効果あるのか紹介していただけないでしょうか?

  • 有酸素運動は、中強度で最も脂肪の利用率が上がり、この強度を”ZONE2″や”ファットバーンゾーン”と呼ぶ
  • 運動中に脂肪の利用率が高くても、一日で見たら脂肪の利用率は変わらない
  • どんな有酸素運動でも一番効くのは”量”なので、自分が好きな有酸素運動をするのが吉

海外では、”12-3-30 ワークアウト”や”ZONE 2″ダイエットと呼ばれるダイエット法がある。

ようじゅ

実は有酸素運動では、強度によって運動中の脂肪利用率が変わる。そこで「一番脂肪が利用される強度で有酸素運動をしよう」というのが、これらのダイエットです

目次

脂肪がどれくらい使われるか?は強度によって変わる

そもそも”12-3-30 ワークアウト”ってなに?

ようじゅ

これは傾斜12%、時速3マイル(時速4.8km)、30分間のトレッドミルをするワークアウトのことで、海外を中心にTikTokで流行った方法です。実際にやってみると、ジョギング程度の強度です

実はこれくらいの”中強度”の運動が脂肪を燃やすことから、この”脂肪利用率の高い強度で有酸素運動をしようぜ!”というもの。

要は低強度だと運動として楽すぎるし、高強度だとエネルギーで糖質が使われてしまうから、「最も脂肪が燃える中強度で有酸素運動しよう!」というもの。

ようじゅ

この高くも低くもない”一番脂肪が燃焼する強度”は海外では”ZONE 2″、日本では”ファットバーンゾーン”と呼ばれていて、この強度で最も脂肪が燃焼するとされています

きつめのウォーキングで脂肪の利用が増える…?

ようじゅ

そして実は、このファットバーンゾーンとも呼ばれる強度では、たしかに「運動中の脂肪利用率が高い」ことがわかっています

傾斜12%、時速4.8kmで30分間歩く”12-3-30トレッドミルワークアウト”について調べた研究。

被験者となったのは18歳以上の男女16名で、2つの条件でトレッドミルをしてもらった

  • 傾斜12%、時速4.8kmで30分間歩く(手すりは掴まない)
  • 12-3-30と同じカロリーを消費するまで好きなペースで歩いてもらった(傾斜は0%)
ようじゅ

実際に海外でバズった(?)12-3-30 ワークアウトについて調べた研究で、結果は下記のようになりました

性別条件完了時間(分)エネルギー消費量(kcal)エネルギー消費率(kcal/分)糖質利用率(%CHO)脂質利用率(%FAT)
女性(n=5)12-3-3030.08(0.09)253.87(34.60)8.44(1.14)67.03(14.77)33.55(14.68)
ランニング25.00(2.80)255.25(35.54)10.26(1.43)70.37(12.53)30.23(12.46)
男性(n=9)12-3-3030.07(0.08)337.42(46.93)11.22(1.57)56.07(9.01)44.45(8.95)
ランニング23.28(2.79)340.01(47.67)14.65(1.49)65.86(11.13)34.73(11.05)

この結果をみると、1分あたりのエネルギー消費率は普通のランニングより低いが、脂質利用率はやや高いことがわかる。

ようじゅ

つまり、実際に”12-3-30 ワークアウト”は一般的なランニングよりも脂肪の利用率が高いことがわかりました

実際にFat-Maxトレーニングで効果があった?

ようじゅ

でも理論的に効果があっても、実際に効果があるとは限らない!というのはいつも言っている話。そもそも実際に”脂肪利用率の上昇”がどれくらい体重に寄与するのかも不明です

ということで実際に「どれくらい痩せたのか?」を示した研究を見ていくのだが、実はみんな大好きメタ分析では”効果あり”という結果になっている。

ようじゅ

こういった”脂肪燃焼を最大化する強度でのトレーニング”をFAT-Maxトレーニングとも呼び、これのダイエット効果について調べたメタ分析がでています

Fat-Maxトレーニングに関する研究11件を抜き出したメタ分析。

ようじゅ

このメタ分析では、結果としてFAT-Maxトレーニングはコントロール群よりも体重も体脂肪量も減ったし、ウエストも減ったという結果になりました

体重の変化
体脂肪の変化
ウエストの変化

これらのフォレストプロットをみると、どの指標でもTotalはFAT-Maxトレーニングに有利という結果に。

ようじゅ

ここらへんの結果の読み方について、詳しく知りたい方は「論文を読むための統計学」をチェックしてみてください

Fat-maxを調べたメタ分析の落とし穴

それじゃあ、やっぱりFAT-Maxトレーニングが有利なわけ?

ようじゅ

ところが、話はそう単純ではありません。というのも、このメタ分析では比較しているコントロール群が、普通の人が思っているようなコントロール群ではないからです

実はこのFAT-Maxトレーニングの研究というのは、コントロール群は”一般的な有酸素運動”ではないことがほとんど。

コントロール群のほとんどは、”運動なし”となっていることが多い。

ようじゅ

つまり、このメタ分析はほとんどの研究において比較対象が”運動なし”なので、”運動そのものの効果”なのか”Fat-maxトレーニングの効果”なのかがわかりません

実際に、このメタ分析に含まれている研究で比較対象が”運動なし”じゃないものは2件だけ。

ようじゅ

そして”一般的な有酸素運動”と比較したこの2つの研究は、どちらも「FAT-Maxトレーニングの優位性は見つからなかった」という結果になっています

被験者となったのは肥満の若年女性136名。3つのグループに割り付けて、5ヶ月のダイエットをしてもらった。

  • G1:最大脂肪酸化に基づくトレーニング
  • G2:VO2maxの60%で運動
  • G3:自宅での自由な中強度運動

5ヶ月時点で、どのグループも同じくらい体重が減った。(G1:-4.1±0.54 kg、G2:-4.7±0.53 kg、 G3:-3.5±0.78 kg)

FAT-max vs HIIT vs 筋トレで比較した研究。どのグループも45分×週3回の運動を12週間続けてもらった。

どのグループも運動によって体重が減少し、HIITでFAT-maxや筋トレよりも体重が落ちた。

  • HIIT: − 40.18% and − 44.97%
  • FATmax: − 24.59% and − 28.09%
  • 筋トレ: − 22.84% and − 29.32%
ようじゅ

ちなみに2つ目の研究でHIITが有利だったのは、45分という同じ時間のトレーニングを比較しているからだと考えられます

つまり、FAT-Maxトレーニングのメタ分析による”有意差”は、FAT-Maxトレーニングと運動なしを比較した研究からもたらされている。

ようじゅ

このメタ分析だけでは、FAT-Maxトレーニングが有利だったのか、そもそも運動しているのが有利だったのかがわからないということです

そして実際には、有酸素運動はどれでも同じ

そして結論を言うと、おそらく有酸素運動はどれをやっても効果は大して変わらないと思われる。

ようじゅ

有酸素運動において「減量に一番効くのは量であって、強度はあまり影響しない」というのが結論になります

速歩き vs ゆっくりと歩くで脂肪減少量は同じ

ようじゅ

実際に量を揃えて、低強度の運動と中強度の運動を比較した研究があるので紹介します

過体重の男女175名を無作為に4グループに割り付け、6ヶ月過ごしてもらった

  • 低強度×低用量:週19.2km(1日2.7km)を歩く
  • 中強度×低用量:週19.2km(1日2.7km)をジョギングする
  • 中強度×高用量:週32km(1日4.6km)をジョギングする
ようじゅ

この研究では、量を揃えて強度を変えたパターンと、逆に強度を揃えて量を変えたパターンの2つが用意されています

ファットバーンゾーンの理論的にいうと中強度のほうが体脂肪が落ちそうなものだが、結果はそうはならなかった。

  • コントロール群は、内臓脂肪が増加した
  • 低用量グループは、どちらも内臓脂肪が増加しなかった
  • 高用量グループは、内臓脂肪も皮下脂肪も減少した

つまり低用量では強度にかかわらず脂肪増加を止めるくらいの効果しかなく、ここから用量を増やしたところ脂肪が減るという結果に。

ようじゅ

つまりこの研究によると、体脂肪減少に一番効いたのは強度よりも量だっということになります

中強度 vs 高強度も同じような結果に

ようじゅ

そして中強度 vs 高強度の有酸素運動に関して、ダイエット効果を調べたメタ分析でも同様に「強度によってダイエット効果は変わらなかった」という結果になっています

中強度 vs HIITを比較した研究54件を解析したメタ分析

ようじゅ

このメタ分析では、結果として「中強度 vs 高強度(HIIT)」で体脂肪の減少量は変わらなかったことが報告されています

実際に、各研究を一覧でまとめたのが下記の図。

この結果を見ると、個々の研究は真ん中の0より左側にあるものもあれば、右側にあるものもある。

そして全体の結果を表すひし形はどうなっているかというと、真ん中の0付近に位置している。

ようじゅ

つまり個々の研究ではHIITに有利なものもあれば、中強度に有利なものも同じくらいあり、全体としてまとめると効果は中立であることを示しています

つまり、HIITだろうと中強度だろうと、有酸素運動をすれば体脂肪は同じくらい減る。

ようじゅ

要は、有酸素運動なんて好きなものをやれということになります

有酸素運動は量に比例して体重が減る

ようじゅ

そして有酸素運動で思ったように体重が減らないとき、それは”魔法のような有酸素運動”を探すより、シンプルに量を増やす方がいいです

実際に有酸素運動の時間とダイエット効果について調べたメタ分析では、時間を増やすほど体脂肪が減ったことが報告されている。

有酸素運動の減量効果を調べた研究。116件の研究から6880人の被験者が抜き出された。

  • 組入基準
    • 介入期間が少なくとも8週間以上
    • 18歳以上の肥満体型
    • 監督下での有酸素運動
    • アウトカムは有酸素運動の効果
    • 有酸素運動の頻度・持続時間・強度が報告されている
  • 男女比
    • 女性が47件
    • 男性が30件
    • 混合が39件
  • 疾患
    • 健常者が75件
    • 合併症が41件
  • トレーニング
    • 78件はプログレッシプ、38件はNonプログレッシブ
    • 介入期間は週55-300分
  • 有害事象
    • 主に膝や足首・関節の痛みなど
    • 血圧上昇が1件

実際の結果は下記の通り。

週あたりの有酸素運動時間と体重減少量
ようじゅ

オレンジ色が体重、水色が体脂肪の減少量を表しています。効果がだんだん頭打ちにはなっていますが、有酸素運動の時間が増えるほど体脂肪が減る傾向にあります

このように体脂肪を減らすことを考えるとき、有酸素運動は強度よりも時間が効いてくる。

ようじゅ

食事のほうが大事なのは確かですが、”脂肪減少に効果的な有酸素運動”を探し続けるよりは、自分がある程度長く続けても苦ではない有酸素運動を選ぶ方がいいと思います

そもそも運動時の脂肪利用率と24時間の脂肪利用率は別

でもファットバーンゾーンって、運動しているときはたしかに脂肪が多く使われるんだよね?なんで痩せないの?

ようじゅ

これは”運動中に脂肪の利用量が多い”としても、”一日単位でみるとその効果はなくなるから”が有力な説です

つまり、”運動時に脂肪を利用しているか”と”1日を通して脂肪の利用量が多いか”は別ということ。

健康な痩せ方の成人男女16名を対象にした研究。

3つの条件で400kcal消費するまでサイクリングをしてもらい、24時間のエネルギー消費量および基質酸化を調べた。

  • 安静日(コントロール)
  • 低強度運動(VO2maxの40%、女性66.3分、男性49.1分)
  • 高強度運動(VO2maxの70%、女性111.9分、男性86.1分)
ようじゅ

ちなみにこの研究では、運動によってマイナスカロリーにならないように、運動日は+500kcalのカロリー設定になっています

そして、結果は下記のようになった。

  • 24時間のエネルギー消費量は、低強度と高強度で同じくらい増加した(低強度:506 ± 34 kcal/日、高強度:546 ± 34 kcal/日)
  • 血漿遊離脂肪酸(FFA)は、高強度(199.5 ± 75.7 μ eq/l)に比べて低強度(442.9 ± 78.3 μ eq/l)の後により大きく増加した(P = 0.03)
  • 24時間の炭水化物酸化量は、低強度と高強度の両方において、コントロールと比較して有意に上昇していた
  • 24時間の脂肪酸化量は、低強度も高強度も、コントロールと差がなかった
  • 運動中の炭水化物酸化量は、コントロール<低強度<高強度だった
  • 運動中の脂肪酸化量は、コントロールよりも低強度と高強度で高かった
24時間の基質利用
運動中の基質利用
ようじゅ

つまるところ、運動時に脂肪利用が多くても、1日という長いスパンで見たら大して脂肪が使われているわけではなかったということになります

実はこれはダイエット界隈でよく見られる現象で、カフェインの食欲抑制効果などがいい例。

ようじゅ

そもそも運動時の脂肪利用がちょっと増えただけで実際にどのくらい体重がへるのか?みたいな問題もあるので、あまりそこは変な理論に踊らされない方がいいと思います

まとめ:運動なんて好きなものをやればいい

今回はファットバーンゾーンのダイエット効果についてまとめた。

有酸素運動の強度とダイエット効果の関係
  • 有酸素運動の強度によって、確かに”運動中の脂肪利用率”は変わる
  • しかし、1日という長いスパンで見ると、”運動中の脂肪利用量”は変わらない
  • 運動の強度よりも量が大事なので、好きな有酸素運動をやるのが吉

ダイエットのために行うとき、一番大事なのは有酸素運動の強度ではなく量。

そう言った意味でも、自分が最も好きで続けられる有酸素運動を選ぶのが吉。

ようじゅ

実際に自分も、もてはやされることが多いHIITは好きじゃないのでやりません。一方でランニングは好きなので、わりと取り入れることが多いです

参考文献

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3. Besnier F, Lenclume V, Gérardin P, Fianu A, Martinez J, Naty N, et al. Individualized exercise training at maximal fat oxidation combined with fruit and vegetable-rich diet in overweight or obese women: The LIPOXmax-Réunion randomized controlled trial. PLoS One. 2015;10: e0139246.

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7. Jayedi A, Soltani S, Emadi A, Zargar M-S, Najafi A. Aerobic exercise and weight loss in adults: A systematic review and dose-response meta-analysis: A systematic review and dose-response meta-analysis. JAMA Netw Open. 2024;7: e2452185.

8. Melanson EL, Sharp TA, Seagle HM, Horton TJ, Donahoo WT, Grunwald GK, et al. Effect of exercise intensity on 24-h energy expenditure and nutrient oxidation. J Appl Physiol. 2002;92: 1045–1052.

関連文献

9. La New JM, Borer KT. Effects of walking speed on total and regional body fat in healthy postmenopausal women. Nutrients. 2022;14: 627.

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