運動は何をしたほうがいいの?
ようじゅ今回はそんな悩みに応える回です。
- 食事制限だけじゃなくて運動をしたほうがいいの?
- 女性でも筋トレは必須?
- 健康的な体作りと魅力的な体作りは必ずしもイコールではない
大前提①食事制限のほうが効率がいいのは事実
「そもそも運動ってしなきゃダメなの?ダイエットでは食事制限が大事なんじゃないの?」



食事制限でダイエットが重要なのはその通りですが、運動もしておいて損はありません。特に長期的な視点に立てば経つほど、運動は重要になります。
この問題に関して、ちょうどいいメタ分析があるので紹介しよう。
運動と食事の併用 vs 運動のみ or 食事だけを比較したメタ分析
この研究では”食事制限+運動”と”食事制限のみ”の効果が調べられているが、その結果は下記の通り。
食事のみとの比較
まずは「食事制限のみ vs 食事制限+運動」から。
3-6ヶ月後の体重減少量 (vs食事のみ)
12ヶ月後の体重減少量 (vs食事のみ)
3-6ヶ月後の時点では併用が-0.6kg多く減量したという結果になっており、これは有意差なし。
しかし12ヶ月以上になると、-1.72kgの減量となっている。



このように長期的には有酸素運動をしたほうが食事制限のみよりも痩せる傾向にあります。
運動のみとの比較
ちなみに運動のみとの比較もされていて、こちらは半年~1年間で約6kgと食事制限をしたほうが圧倒的に有利という結果になっている。
3-6ヶ月後の体重減少(vs運動のみ)
12-18ヶ月後の体重減少(vs運動のみ)
たしかに運動は食事制限ほどは大きな効果はない。
しかし長期になればなるほど運動の効果は顕著になってくる。
他にも運動には体型改善だけでなく精神の安定や意志力向上などメンタル面でもメリットが多い。



減量後のリバウンド防止という意味でも、運動習慣はつけておいて損はないと思います。
どんな体型でもやることは基本同じ
体型改善という意味で効果的なのは有酸素運動+筋トレの組み合わせ
現代社会においては、体型の悩み=肥満という人が多いだろう。
そんなときに有効なのは、王道ではあるが「有酸素運動+筋トレ」の組み合わせ。
なぜ両方が必要かと言うと、それぞれ役割が違うから。
- 筋トレ→筋肉を維持する
- 有酸素運動→脂肪の燃焼&意志力の強化
このことをわかりやすく示したのが2021年の研究。
肥満体型の人に有効な運動形態を調べたメタ分析。
32件のランダム化試験から4774名の被験者が抜き出された。
- 有酸素運動が21件
- 筋トレ研究が8件
- 同時トレーニングが14件
- HIITは含まれていない


まずこの研究では、脂肪減少には有酸素運動(-1.54kg)や筋トレ単独(-1.11kg)よりも、複合トレーニング(-1.92kg)が効果的だったという結果が得られている。
つまり、有酸素運動も筋トレも両方やることで、どちらかよりも脂肪が減るという結果に。
そして徐脂肪体重を増やしたのは、筋トレ単独と複合トレーニング…つまり筋トレを取り入れていたグループ。
要約すると「筋肉を保ちつつ脂肪を燃やした」のは筋トレと有酸素運動をやっていた、というなんともつまらない(?)結果が得られた。



筋トレで筋肉を維持しつつ、有酸素運動で意志力を強化しながら脂肪を削っていくというのが王道の運動パターンになります。
どんな有酸素運動をすれべいいのか?問題
どんな有酸素運動でも一定の効果はある。
ちなみにここで「有酸素運動はなにをすればいいの?」という人がいるだろう。
結論から言うと、どんな有酸素運動でも一定の効果がありそう。
たとえば先ほどのメタ分析でいうと、有酸素運動と言ってもその内容はトレッドミルやサイクリング、クライミングなど様々。
それらの研究を統合して長期的に効果があったということは、裏を返せばどんな運動でも一定の効果をもたらす可能性がある。
ぶっちゃけ「帰りにバスを使わず歩く」がいいという人はそうすればいいし、家で動画を見ながらYouTubeで一緒にエクササイズするのがリフレッシュになるという人はそれでもいい。
「でもただ有酸素運動をしろと言われても、何をしたらいいかわからない…」



「そんな人におすすめなのがジョギングです。以前の記事で紹介したことがあるので、気になる人はチェックしてみてください。
とはいえ、有酸素運動は先ほども言ったように長期的になるほど恩恵が少しずつ出てくるタイプ。



続かなかったら元も子もないので、自分が続けられる運動を選ぶことが重要です。
HIITはどうなのか?
ちなみにHIITはどうなの?という人のために紹介しておくと、HIITも従来の有酸素運動と同じくらいの効果が期待できそうな感じ。
HIItが従来の運動よりも優れているという研究もあるにはある。
肥満の人に対する高強度運動(HITやHIIT)の効果を調べた
| HIT | study (n) | participants (n) | MD (IV, Random, 95% CI) | p-value | I2 |
| VO2max (ml/kg/min) | 15 | 469 | 1.83 [0.70, 2.96] | <0.05 | 31% |
| BMI (kg/m2) | 15 | 437 | 0.20 [-1.10, 1.50] | 0.76 | 91% |
| Body weight (kg) | 12 | 386 | -1.18 [-4.16, 1.80] | 0.44 | 0% |
| Body fat (%) | 10 | 296 | -1.69 [-3.10, -0.27] | 0.02 | 30% |
| Waist circumference (cm) | 8 | 253 | -1.04 [-4.54, 2.45] | 0.56 | 27% |
→体脂肪率に関して、HITは従来の低強度〜中強度運動よりも効果的
| HIIT | study (n) | participants (n) | MD (IV, Random, 95% CI) | p-value | I2 |
| VO2max (ml/kg/min) | 11 | 257 | 1.79 [0.21, 3.36] | 0.03 | 38% |
| BMI (kg/m2) | 9 | 177 | 0.37 [-1.44, 2.18] | 0.69 | 70% |
| Body weight (kg) | 7 | 153 | -0.42 [-5.30, 4.47] | 0.87 | 7% |
| Body fat (%) | 7 | 157 | -2.01 [-3.73, -0.30] | 0.02 | 0% |
| Waist circumference (cm) | 5 | 111 | -1.63 [-6.37, 3.10] | 0.87 | 7% |
→体脂肪率に関して、HIITは従来の低強度〜中強度運動よりも効果的


ただし、研究あるあるだが普通に中強度の有酸素運動と変わらないですよという研究もある。
HIITは従来の中強度の有酸素運動と減量効果は変わらない。
「え、でもたかが数分で20-30分もやる有酸素運動と同じならそっちのほうがよくない?」



たしかに運動の時間が全然取れなくて、HIITが自分に一番向いているならやってみてもいいのではないでしょうか。
ただし個人的に「なんの運動をしたらいいの?」みたいな人にHIITはハードルが高い気がする。
ちなみにHIITのような高強度運動は特に、運動習慣がないなら始めから全力でやりすぎないほうがいい。
高強度すぎると関節を痛めるリスクがあるし、最悪の場合は横紋筋融解症と呼ばれる筋繊維が過剰にダメージを受ける病気なども報告されているほど。[5]
とある英語記事にある文言を覚えておいて損はないだろう。
「もうバーピーは無理だ」と感じたら、クラスの他の人がやっているからとか、競争心から無理に続けるのではなく、そこで止めるべきです。
ちなみにエビデンス界隈ではわりとHIITが好きな人が多い気がするが、HIITは魔法のように扱われすぎじゃね?みたいな論文も出ているほど。[6–9]



個人的にはあんまり楽しくもないし、メンタル面でのポジティブな効果も感じられないので最近はぜんぜんやっていません。
スレンダーになりたい女性は筋トレ不要説
基本的には「筋トレ+運動」が王道でありながら一番おすすめなのだが、女性の筋トレに関してはやらなくてもいい場合も存在すると思っている。
というのも、筋トレをすると多少なりとも筋繊維が太くなるから。
例えば普通体型の女性が「K-POPアイドルのようになりたい!」と思ったときに筋トレをすると努力の方向としてはややずれている。
45kgの女性が40kgになったとき、”45kgの体を動かせるだけの筋肉”はスレンダーになるという目標とは反する。
つまり余剰な筋肉はないほうが、”スレンダーになりたい女性”にとっては目的に適っているのだ。
「でも筋肉を保ったまま痩せないと、リバウンドしやすくなるのでは?」
これは女性のダイエットでもよく聞かれる話ですが、正直言うとそこまで決定的な話ではない。
たしかに筋肉を保つことに若干のプラスの効果はあるかもしれないが、別に筋肉を保とうが何しようが痩せればリバウンドするもの。
たとえば2020年の研究では、男性は筋肉の減少量はリバウンド量に関係していた。
男性のほうが筋肉が落ちた時にリバウンドするという研究。
- リバウンドと最も関係していたのは男女ともに『体重減少量』だった!(男性:11.4%、女性10.0% )
- 男性で2番目にリバウンドと関係していたのは『筋肉の減少率』だった!(4.6%)
- 男性は筋肉の減少量と食欲増加の間に正の相関があった!(R=0.69)
- 男性は筋肉の減少量と満腹感減少の間に負の相関があった!(R=-0.30)
- 女性ではこれらの変化は見られなかった!
- 男女ともに筋肉の減少率は食欲の増加と満腹感の減少に弱い相関が見られた!(R=0.28, R=-0.30)
それでもやっぱり一番関係していたのは体重減少量で、筋肉の減少量は二の次。
しかも女性においては筋肉量の減少はリバウンド量との関係が見いだせなかった。
最近のレビュー論文でも、「筋肉減少量とリバウンド量の間には相関があったりなかったりするよね」と議論されていたりする。
徐脂肪体重の減少量と体重再増加量の間には相関関係が見られることもあれば、見られないこともある。
このように、筋肉を保てばリバウンドしないと言うには根拠が薄い。



ダイエットにおいては筋肉だろうが脂肪だろうが組織が減れば、体は体重を戻す方向に働くと言うのが正しい認識だと思います。
大前提②健康な体と魅力的な体は別
「それでも筋肉がなくなっちゃうなんて健康じゃないじゃん!」



その反論に関しては大前提が間違っていて、そもそも”魅力的な体型”と”健康的な体型”は別です。
生物としては「健康な体=魅力的な体」となる場合が多いが、実はホモ・サピエンスではここが少しずれている。
例えばグッピーのメスは、最もカロテノイド色素が濃いオス=栄養素が豊富で健康的なオスを選ぶことが知られている。[12]
このように進化論的には、健康な個体は魅力的に映るという話がある。
これはヒトでも同じで、たとえば左右対称な顔は健康度を反映しているから魅力的と言った具合。



ちなみに2015年のヒトを対象にした研究でも、高カロテノイドの顔は低カロテノイドの顔に比べて魅力的と評価されることが報告されています。[13]
そういう意味では健康的な状態こそが魅力的に映るはずだが、現代社会では魅力的な体型は健康的な体より痩せ型である確率が高い。
魅力的と判定された体型は健康的と判定された体型よりもBMIが低かった
女性において健康的と魅力的は乖離していた
文化によって魅力的な体型は違う
つまり、魅力的な体を作るうえで「健康かどうか」を考えるのはわりと的外れ。
実際に男性が憧れる腹筋バキバキの体や、女性が憧れるK-POPアイドルのような体型が健康的かというと疑問が残る。



たとえばフィジークにでるような体脂肪率というのは免疫が低く、実際に自分がフィジークの準備をしていた冬にはめちゃくちゃ風邪を引きまくりました。
もちろん健康を軽視していいとは思わないが、「健康的なのか?」を考え始めると魅力的な体を作ると言う目的がぶれる。
たとえば高齢者の女性であれば筋肉が減少することによる転倒リスクや怪我のリスクが大きいので、確かに筋肉を保った方が絶対にいいだろう。



しかし20代の女性であれば筋トレが必須かと言われればそうとも言えず、仮に自分が女性でK-POP体型を目指すのであれば筋トレはやらないと思います。
ガリガリの男性
最後にガリガリの人に関してだが、シンプルに有酸素運動よりも筋トレに時間をかけるほうがいい。
というのも下手に有酸素運動を入れると、マイナスカロリーになってしまい筋肥大を阻害する可能性が高いから。
具体的にはカロリー収支が-200kcalよりもマイナス寄りになってくると筋肥大が阻害される可能性が高い。
「カロリー不足は実際に筋肥大を阻害するのか」を調べたメタ分析。
研究52件を集めて、体重の減少量から実際のカロリー不足量を測定した。


有酸素運動をすると、1日の消費カロリーは多少なりとも増える。



そこに”食べれない体質”が加わると、カロリー収支がマイナスになる可能性が普通にあります。
なのでガリガリで悩んでいる場合は、有酸素運動はやめて多めに筋トレに時間を割いて試行錯誤するのがいいだろう。
まとめ
今回は悩み別のやるべき運動についてまとめた。
- 多くの体型の悩みには王道だが「筋トレ+有酸素運動」が無難
- 普通体型からスレンダー体型を目指す女性にとっては、筋トレはネガティブに作用する可能性が高い
- 魅力的な体を作りたいときは、一旦健康は度外視する方がいいときもある



筋トレや有酸素運動の始め方に関しては、他の記事がたくさんあるのでそちらを参照してみてください。
参考文献
1. Johns DJ, Hartmann-Boyce J, Jebb SA, Aveyard P, Behavioural Weight Management Review Group. Diet or exercise interventions vs combined behavioral weight management programs: a systematic review and meta-analysis of direct comparisons. J Acad Nutr Diet. 2014;114: 1557–1568.
2. Morze J, Rücker G, Danielewicz A, Przybyłowicz K, Neuenschwander M, Schlesinger S, et al. Impact of different training modalities on anthropometric outcomes in patients with obesity: A systematic review and network meta-analysis. Obes Rev. 2021;22: e13218.
3. Türk Y, Theel W, Kasteleyn MJ, Franssen FME, Hiemstra PS, Rudolphus A, et al. High intensity training in obesity: a Meta-analysis. Obes Sci Pract. 2017;3: 258–271.
4. Wewege M, van den Berg R, Ward RE, Keech A. The effects of high-intensity interval training vs. moderate-intensity continuous training on body composition in overweight and obese adults: a systematic review and meta-analysis. Obes Rev. 2017;18: 635–646.
5. Schlegel P, Polívka T. Beyond the intensity: A systematic review of rhabdomyolysis following high-intensity functional training. Apunts Sports Medicine. 2024;59: 100447.
6. Ekkekakis P, Swinton P, Tiller NB. Extraordinary claims in the literature on high-intensity interval training (HIIT): I. bonafide scientific revolution or a looming crisis of replication and credibility? Sports Med. 2023;53: 1865–1890.
7. Ekkekakis P, Tiller NB. Extraordinary claims in the literature on High-intensity interval training: II. Are the extraordinary claims supported by extraordinary evidence? Kinesiol Rev (Champaign). 2023;12: 144–157.
8. Ekkekakis P, Vallance J, Wilson PM, Ewing Garber C. Extraordinary claims in the literature on high-intensity interval training (HIIT): III. Critical analysis of four foundational arguments from an interdisciplinary lens. Psychol Sport Exerc. 2023;66: 102399.
9. Ekkekakis P, Biddle SJH. Extraordinary claims in the literature on high-intensity interval training (HIIT): IV. Is HIIT associated with higher long-term exercise adherence? Psychol Sport Exerc. 2023;64: 102295.
10. Turicchi J, O’Driscoll R, Finlayson G, Duarte C, Hopkins M, Martins N, et al. Associations between the proportion of fat-free mass loss during weight loss, changes in appetite, and subsequent weight change: results from a randomized 2-stage dietary intervention trial. Am J Clin Nutr. 2020;111: 536–544.
11. van Baak MA, Mariman ECM. Physiology of weight regain after weight loss: Latest insights. Curr Obes Rep. 2025;14: 28.
12. Kodric-Brown A. Female preference and sexual selection for male coloration in the guppy (Poecilia reticulata). Behav Ecol Sociobiol. 1985;17: 199–205.
13. Lefevre CE, Perrett DI. Fruit over sunbed: carotenoid skin colouration is found more attractive than melanin colouration. Q J Exp Psychol (Hove). 2015;68: 284–293.
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15. Coetzee V, Re D, Perrett DI, Tiddeman BP, Xiao D. Judging the health and attractiveness of female faces: is the most attractive level of facial adiposity also considered the healthiest? Body Image. 2011;8: 190–193.
16. Swami V, Tovée MJ. Perceptions of female body weight and shape among indigenous and urban Europeans. Scand J Psychol. 2007;48: 43–50.
17. Murphy C, Koehler K. Energy deficiency impairs resistance training gains in lean mass but not strength: A meta-analysis and meta-regression. Scand J Med Sci Sports. 2022;32: 125–137.










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