女性「ダイエット中に甘いものをやめられない……」
そんなとき、我慢しようとして我慢できるなら苦労はしない。
むしろ我慢しようとして、ドカ食いに走ったことがある人もいるだろう。
実はこれ、人間の心理的にごく自然な現象。



ダイエットでは甘いものを禁止するのではなく、実はこの時間に毎日食べると決めてしまうのがオススメです。



そんな方法で痩せたら苦労しないよ。
そう思う気持ちもわかりますが、実際に我慢しようとして失敗してる人が多いのではないでしょうか。
それなら我慢ではなく逆に毎日食べると決めるほうが正解だったとしても不思議ではないと思います。
毎日少量を食べる習慣でリバウンドしなかった
結論から言うと、甘いものの対処法でおすすめなのが、“毎朝デザートを一つ食べる”と決めてしまうこと。
つまり、朝(または昼)ご飯に必ず甘いものを食べること。
実は禁止するより毎日の習慣として固定化したほうが痩せることがわかっています。
肥満の被験者193名を2つのグループにわけた
- 低炭水化物の朝食
- 高タンパク質&高糖質の朝食
実際の食事の構成は下記のようになっています。
女性
| 食事 | 高炭水化物群 (HCb) | 低炭水化物群 (LCb) |
| 朝食 | 600 kcal / C 60g / P 45g / F 20g | 300 kcal / C 10g / P 30g / F 16g |
| 昼食 | 500 kcal / C 10g / P 70g / F 20g | 500 kcal / C 10g / P 70g / F 20g |
| 夕食 | 300 kcal / C 8g / P 45g / F 10g | 600 kcal / C 16g / P 90g / F 20g |
| 合計 | 1400 kcal / C 78g / P 160g / F 50g | 1400 kcal / C 36g / P 190g / F 56g |
男性
| 食事 | 高炭水化物群 (HCb) | 低炭水化物群 (LCb) |
| 朝食 | 600 kcal / C 60g / P 45g / F 20g | 300 kcal / C 10g / P 30g / F 16g |
| 昼食 | 600 kcal / C 12g / P 84g / F 24g | 600 kcal / C 12g / P 84g / F 24g |
| 夕食 | 400 kcal / C 11g / P 60g / F 20g | 700 kcal / C 19g / P 105g / F 23g |
| 合計 | 1600 kcal / C 83g / P 189g / F 64g | 1600 kcal / C 41g / P 219g / F 63g |
どちらもカロリーは同じだが、高炭水化物群のほうが朝に糖質を摂っている分、糖質量は多め。
低炭水化物群は糖質が控えめな分、高炭水化物群よりもたんぱく質量が多くなっている。
そして、この研究で特徴的なのは、毎日朝に下記から選ばれたデザートを用意しているということ。
- チョコレート
- クッキー
- ケーキ
- アイスクリーム
- チョコレートムース
- ドーナツ
この2グループで16週間の減量期間後に16週間の追跡調査をしたところ、次のような結果になった。


実験期間中の体重減少は同じくらいだったが、追跡調査期間で低炭水化物群は体重が増加。
一方で、高炭水化物群は追跡調査期間も体重が減少し続けた。
なぜこのようなことが起こるかというと、”渇望”のレベルで対象的なことが起こったから。
- 減量期間終了後と追跡調査完了後、低炭水化物グループは甘いものへの渇望スコアが増加していた
- 一方で、高炭水化物グループは甘いものへの渇望スコアが低かった
しかも、この研究ではベースラインの渇望スコアはどちらも同じだったことが報告されている。
つまり、甘いものを毎日食べるとしたほうが甘いものへの渇望に悩まされなくて済むのだ。
この毎日少量だけ食べる戦略をインクルージョン(inclusion)戦略というが、これは渇望をうまく制御できることが他の研究でも示されている。
1年間の体重減少期間後、さらに1年間の体重維持期間を設けた。
渇望食品を少量取り入れたグループは、そうでないグループよりも体重が減少したうえ、甘いものや高脂肪食への渇望も減少した。


ちなみにどのくらいの頻度で食べていたかというデータも載っている
- 1日に2-3回→6人
- 週に4-5回→5人
- 週に1-3回→5人
ダイエット中といえば、「甘いものは食べない!」となりがち。
だが実際にはこのように、実は毎日少量食べるほうが食欲を制御しやすく、痩せる傾向にある。
チョコレートを禁止したところ、むしろ食べる量が増えた
逆に、完全に排除しようとして食欲が暴走した例も報告されている。
103名の女子学生を対象に、下記の3グループに分かれてもらい1週間過ごしてもらった。
- チョコレート禁止群
- バニラ禁止群
- コントロール
結果として、チョコレートを禁止したグループが一番大量のチョコレートを消費した。
筋トレをしている男女23名を2グループに分けた
- 厳しいダイエット→卵やアボカド、全粒粉トーストなどの典型的なダイエット食
- IIFYM→カロリーとPFCバランスを気にすれば何を食べてもOK
固定的な食事と柔軟な食事を比較したところ、どちらも同じくらい痩せたが厳しいダイエットグループはリバウンドした
| フェーズ | 厳しいダイエット | IIFYM | ポイント |
| ダイエット期(10週間) | 脂肪 −3.2 kg | 脂肪 −2.3 kg | どちらも同程度に脂肪が減少 |
| 追加調査期(10週間) | 体重 +1.1 kg(リバウンド) | 体重 ±0 kg(維持) | 厳格群はリバウンド、IIFYMは維持 |
このように完全に排除しようとする戦略をexclusion(完全排除)戦略という。



多くのダイエッターは完全排除を試みようとしますが、ダイエット自体はうまくいってもリバウンドする可能性が高いです。
意外かもしれないが、この完全排除戦略よりもinclusion(少量許可)戦略のほうが長期的には成功しやすいことがわかっているのだ。
現在の自分と未来の自分を重ねられる人のほうがうまくいく
自分も完全排除しないで少量を食べるという戦略を取っているが、それでもつい食べすぎてしまいそうになることは少なからずある。
そんなときは「現在の自分の延長線上に未来の自分がある」ということが意識するといい。



「そんなの当たり前じゃない?」



「そう思うかもしれませんが、実はヒトは未来を楽観視する傾向にあります」
ヒトは未来の自分は、現在の自分よりも時間もお金もあると錯覚する
実際にこのように考えたことがある人は多いのではないだろうか?
- 「今は忙しいから時間ができたらやろう」
- 「今月は厳しいけど、来月は払えるからクレジットカードで払おう」



こんな風に、ヒトは未来の自分は現在の自分よりも”うまくやっている”と錯覚する傾向があります。
しかし、実際は”時間があるとき”など来ないし、来月も同じように給料を使い切ってカツカツの生活をしているもの。
未来を楽観視する傾向はダイエットでも同じ。
なぜか今日我慢できなくても、明日からの自分はダイエットを完璧にこなせると考える。



しかし、実際には今日我慢できなかった人が明日になって急に意志力が強固になり食欲を我慢できることなどありません。
このように未来の自分は今の自分より意志力が強いし、時間もお金もあると考えるのがヒトなのだ。
現在と未来の自分が重なっているほど、将来のための選択をしやすい
逆に、未来の自分を現在の自分と重ねている人ほど”長期的に好ましい選択”を取ることがわかっている。
ヒトは遠い未来の自分ほど”他人”のようにかんじる傾向がある。
その未来の自分を”他人”と感じる度合いが大きいほど将来のためになる選択を取りづらい


左上から右下にいくにつれて、現在の自分と未来の自分が重なっている。
この重なりが大きい人ほど、将来のために貯蓄したり健康な行動を取ったり可能性が高い。
つまり未来のための行動をとるのだ。
実際に研究では、自分の写真を老けさせたアバターと実際に会うことで、被験者が未来のための選択(退職金口座への貯蓄)を取る傾向が高まったことが報告されている。


老けた自分のアバターで意志力が強くなる話は有名なので、聞いたことがある人も多いはず。
結局は未来の自分というのは今の自分の延長線上にある。
明日になって急に何もかもできるスーパーマンになるわけではない。
今日あることは明日もある
要は、明日も明後日もそのまた次の日も、実際は今日と同じ選択肢をとる可能性が非常に高い。
実際に「スタンフォードの人生を変える教室」という本の中に自制心を高める面白い方法があったので紹介しよう。



この本は意志力の科学をまとめた本でダイエットネタも多いので、興味がある人は一度読んでみることをおすすめします。
この本に、行動経済学者のラクリンの助言として「タバコを吸うなら毎日同じ本数」を吸うように指示すると、禁煙を促さなくても喫煙量が減少するというエピソードが載っている。
この戦略がなぜ効くかというと、「明日からやればいいや」という言い訳ができなくなるから。
毎日同じ本数を吸うということは、今日一箱吸えば、明日も一箱吸わなければならない。
そしてその次の日も、さらに次の日も一箱吸う…そのように考えたとき、ヒトは毎日一箱吸うことによる健康への影響を無視できなくなるのだ。
つまり「明日から頑張れば今日だけ吸ってしまおう」という言い訳ができなくなるのだ。
これはつい甘いものが食べたくなったときも同じ。
ヒトはつい「今日だけケーキを食べて明日から頑張ろう」と考えがち。
そんなときは、一度立ち止まって「今日食べ過ぎたら明日も食べすぎる。そんな毎日を繰り返したら1ヶ月後、半年後にはどんな体型になっているわけ?」と自分に問いかけてみよう。
これだけでも未来との重なりが増えて、自制心が強くなるはず。
そしてインクルージョン戦略と組み合わせれば意外と「どうせ明日も食べるんだから、明日食べよう」となるはず。
ヒトは”先延ばし”が得意な生き物。
食べないように我慢しようというのは難しいが、明日食べようなら意外と我慢できたりする。
まとめ
今回は甘いものの対処法についてまとめた。
- 渇望食品は完全排除よりも、少量を毎日食べるのがおすすめ
- 今日食べ過ぎれば明日も食べすぎると肝に銘じる
- インクルージョン戦略で食べすぎたくなったときは、「明日食べればいいや」と先延ばしにする
参考文献
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3. Polivy J, Coleman J, Herman CP. The effect of deprivation on food cravings and eating behavior in restrained and unrestrained eaters. Int J Eat Disord. 2005;38: 301–309.
4. Conlin LA, Aguilar DT, Rogers GE, Campbell BI. Flexible vs. rigid dieting in resistance-trained individuals seeking to optimize their physiques: A randomized controlled trial. J Int Soc Sports Nutr. 2021;18: 52.
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関連文献
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10. Allameh SA, Mokhtari Z, Hosseini E, Askari G. Effects of mindfulness-based interventions on food craving in adults: a systematic review and meta-analysis of controlled clinical trials. BMC Psychol. 2025;13: 1022.
11. Dalton M, Finlayson G, Walsh B, Halseth AE, Duarte C, Blundell JE. Early improvement in food cravings are associated with long-term weight loss success in a large clinical sample. Int J Obes (Lond). 2017;41: 1232–1236.



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