毎日決まった時間に食べるほうが痩せる!
規則正しい食事で体内時計が整う!
ようじゅ一度は耳にしたことがあるかもしれないこの話ですが、本当なのでしょうか?
- 規則正しい食事=健康にいいは紀元前からある
- 規則正しい食事がダイエットに有利なメカニズム
- 不規則な食事の極み「1日おき断食」のダイエット効果



栄養学の世界では半ば一般的になっているこの話、その成り立ちを見てみましょう
規則正しい食事は健康にいい?
規則正しい食事=健康にいいの起源は紀元前に遡る
規則正しい食事がいいというのは健康に関する話でもよく聞くが、この起源は2500年も前に遡る。



ヒポクラテス(紀元前460-377年)が書いた”sex non-res naturales(the six non-natural things)”には、不規則な食事は体に悪いと書かれていたとされています
その後に看護界の重鎮であるナイチンゲールが書いた書物にも、規則正しい食事の重要性が書かれている[1]。
古から伝わる”規則正しい食事の重要性”だが、近代の研究でも健康に良さそうなメカニズムが見つかっている。
規則正しい食事が健康にいいとされるメカニズム



毎日同じ時間に食事を摂ると、不規則な場合と比べて血糖反応が良好なことがわかっています
2週間に及ぶ研究で、食事を摂る時間を固定したほうがグルコース反応がよかった
朝食を規則正しく食べる人のほうが血糖反応が良好
習慣的なサーカディアンリズム→その後2つで実験
- サーカディアンリズムと揃えて4日間
- サーカディアンリズムとずらして4日間
サーカディアンリズムのズレは、インスリン感受性の低下を示した
ちなみに最後の研究ではそもそも朝の時間帯はβ細胞がインスリンを出す能力が高かったことが報告されている。



それと合わせて、サーカディアンリズムの”ズレ”自体も、インスリン感受性を低下させたことを示しました
同じ時間に食事をすると体内時計が整う理由
同じ時間に食事を摂ると体内時計が整う!



この話を聞いたことがある人は多いかと思いますが、この話もあながち嘘ではありません
というのも、絶対的な”何時”という時間とは別に、”いつもと同じ時間帯かどうか?”も代謝に影響があるとされている。



体内時計というのはサーカディアンリズムのことで、日本語で「約1日」を意味するラテン語の”circa diem”が名前の由来になっています[5]
- ホルモン(メラトニン、コルチゾール、レプチンなど)
- 睡眠覚醒サイクル
- 深部体温(日中にピークに、夜間に最低値になる)
ちなみに生物のリズムには24時間ではないものもあり、それぞれ別の呼び方が使われる。
- 24時間以内のリズム(睡眠など)➡ultradian rhythm
- 24時間以上のリズム(月経など)➡infradian rhythm
- 24時間の周期➡circadian rhythm
一定のリズムを刻むサーカディアンリズムだが、中枢と末梢にそれぞれ”時計”の役割を果たすものが存在する。
- 脳にある視交叉上核
- 末梢時計
視交叉上核はマスタークロックとも呼ばれ、網膜からの光を受けて末梢の体内時計に伝える唯一の分子時計。



「起きたらすぐに日光を浴びたほうがいい」と聞いたことがあるかもしれませんが、唯一マスタークロックを調整できるのが日の光だからです[5]
また末梢時計とも呼ばれるものが体の各所にあり、例えば食物の摂取は腸にある末梢時計に影響を与える。
特に現代人に多いのが平日と週末の摂取時間や起床時間が異なってしまうパターンだが、代謝的時差ボケ(Metabolic jetlag)と呼ばれ代謝不良を起こすとされている。[6]



こういった理由から「決まった時間に食事を摂ると体内時計が整う」というのは、あながち嘘でもありません
規則正しい食事がダイエットに有利な理由



ダイエットにおいても、体内時計を意識したほうが痩せると言えそうなメカニズムがいくつかあります
理由①不規則な食事で食欲が増えた
まず1つ目のメカニズムとして、不規則な食事で食欲が増えることが挙げられる。
被験者となったのは健康的な成人14人。サーカディアンリズムを12時間ずらした。
- サーカディアンリズムのズレは、グレリンレベルを5.4%上昇させた(p=0.04)
- サーカディアンリズムのズレは、高エネルギー密度の食事への欲求を増加させた(p<0.05)
- サーカディアンリズムのズレによる食欲増加は有意差には達さなかった(p=0.08)
まずサーカディアンリズムを普段とずらしたことによって、食欲を引き出すホルモンであるグレリンのレベルが上がった。
そしてその結果、実際にジャンクフードなどへの欲求と食欲が増加したことが報告されている。



食欲の指標に関してはP=0.08と有意差には達していませんが、ほとんど有意差の結果となっています
また他の研究でも同様の現象が確認されている。
被験者となったのはシフトワーカー7人。サーカディアンリズムを12時間ずらした。
- サーカディアンリズムのズレは、グレリンレベルを17%上昇させた(p<0.05)
- サーカディアンリズムのズレは、食欲を38%増加させた(p<0.05)
この研究でも不規則な食事でレプチンが上昇し、実際の食欲も増加したことが報告されている。



やっぱり不規則な食事はダイエットに悪いんだ!



はやる気持ちも分かりますが、これらの研究を現実世界に応用するにはいくつか注意点があります
注意点①サーカディアンリズムのズレで運動量も増えた
実はこの研究では、サーカディアンリズムのズレで予想外に運動量が27%増えたことも報告されている。
ヒトは基本的に、消費カロリーか摂取カロリーのどちらかが増減するともう一方も増加する”代償効果”が発揮される。



この代償効果によって食欲が増えた可能性があり、食欲が増えても運動量も増えているので体重は増えない可能性があります
注意点②サーカディアンリズムがずれすぎ
そしてもう一つの注意点が、サーカディアンリズムがずれすぎていること。
普通の人は、たまに食事の時間がズレたとしても数時間程度。
普段の食事摂取と半日もずれる、いわば昼夜逆転生活になるときはほとんどないはず。



実際に数時間のズレで半日ズレと同じような効果があるかは不明です
②食事性熱生産に不利だった
不規則な食事がダイエットに不利な理由の2つ目は、食事性熱生産にある。
朝食や夕食の摂取など、時間栄養学の話で必ず出てくる食事性熱生産。



不規則な食事をしていると、この食事性熱生産が低下することがわかっています
被験者となったのはインスリン抵抗性の肥満女性9名。期間は14日間のクロスオーバー試験。
- 1日6食を摂取
- 1日3-9食を摂取
この研究では、まず規則正しい食事時間として1日6食で過ごしてもらっている。
そして次に不規則な食事として1日3-9食を試してもらったというもの。



1日3-9食を各2回ずつ行っているので、平均すると1日6食になります
このように規則正しい食事と不規則な食事で比較したところ、結果は下記のようになった。
- 食事による熱生産が優位に高かった)
- テスト飲料に対するGLP-1の反応は、規則正しい食事のほうがよかった



やっぱりダイエットでは規則正しい食事のほうがいいんだ!



そうなる気持ちも分かりますが、ここでも細部が重要になってきます
朝食や夕食の話でもそうだが、この食事性熱生産には毎回同じ罠が仕掛けられている。
それは絶対値にすると、気にするのもバカらしいくらい小さな値である場合が多いこと。
この研究も例外ではなく、20.9kJ=5kcalしか差がなかったことが報告されている。



たった5kcalのために毎日同じ時間に無理やりにでも食事を摂る…少なくとも自分はそこまでの価値は感じません
「食事時間が不規則な人ほど太っている」という事実
このようにメカニズム的には有利そうな規則正しい食事。



実際にヒトを対象にした観察研究でも、規則正しく食事を摂る人のほうが痩せていることが判明しています
スウェーデンに住む60歳の男性3607人(規則的な食事3,170人、不規則な食事437人)を対象にした研究。
- 食事を規則正しく食べる人はメタボリックシンドローム罹患率が20%だったのに対して、食事が不規則な人は27%だった
- 不規則な食事をする人の方が体重が重かった(76.7kg vs 78.3kg)
- 不規則な食事をする人の方、運動しない人が多かった(9% vs 21%)
- 運動しない人の方が、トリグリセリド値やコレステロール値が高かった
- 運動しない人の方が、インスリン抵抗性を表すHOMA-2の値が高かった
- 不規則な食事の人は野菜とフルーツの摂取量が少なかった
被験者となったのは男女1768人。5日間に及ぶ食事の不規則性スコアを評価した
- 食事パターンが不規則な人は、BMIが高くウエストが太かった
- 食事パターンが不規則な人は、脂肪分やアルコールの摂取量が多かった
被験者となったのは男女4302人。
食事の時間が不規則な人は10年後にメタボリックシンドロームになるリスクが高く、ウエストが太く拡張期血圧も高かった
どの観察研究でも、毎日の食事時間が規則的な人のほうが痩せていたことが報告されている。



やっぱり不規則な食事をすると太るんだ!



そうなる気持ちも分かりますが、そう結論づけるのはまだ早いです
と言うのも、観察研究には「相関関係が分かっても因果関係は分からない」という欠点があるから。
実際に先ほどの観察研究でも、食事時間が不規則な人のほうが運動しないしフルーツや野菜も食べない人が多いことが報告されている。



つまるところ、食事時間が不規則だから太っているのか、そもそも食事時間が不規則な人の生活習慣が終わっているから太っているのかは分かりません
特に現代ではコンビニなどの普及により、いつでもどこでも食べられる時代。
肥満の増加に合わせて不規則な食事を摂る人も増えているのが現代なので、不規則な食事も肥満の原因では?と言われることもある。[13,14]



しかし、実際には不規則な食事と肥満の増加には確かに関連性はあるかもしれませんが、因果関係があるかどうかはかなり怪しいです
「食事時間が不規則→体重が増加する」は成り立たない
実際に相関関係ではなく因果関係を調べるために行われるのが、ランダム化試験と呼ばれるもの。



食事時間を不規則にしたダイエットのランダム化試験は数こそ少ないですが、全くないわけではありません
実際には体重もウエストも変わらなかった
そしてこのランダム化試験では、食事時間を不規則にしても体重やウエストに影響がなかったことが報告されている。
被験者となったのは普通体型の女性11人。14日の食事パターンを2度行うクロスオーバーデザイン。
- 1日6食を摂取
- 1日3-9食を摂取
まず1つ目の条件では、食事回数は1日6食で固定。
そしてもう一方の条件では、食事回数を3-9食をランダムに各2回ずつ摂ってもらった。



どちらも摂取カロリーは同じに揃えて”規則正しい食事vs不規則な食事”を比較しました
2週間後に体重とウエストを計測したところ、結果は以下のようになった。
- 体重はどちらのグループも変わらなかった(-0.4kg vs -0.4kg)
- ウエストはどちらのグループも変わらなかった(±0.0cm vs -0.6cm)
| 規則的な食事パターン | 不規則な食事パターン | |||
| 実験前 | 実験後 | 実験前 | 実験後 | |
| 体重(kg) | 58.7 ± 6.1 | 58.3 ± 6.2 | 58.6 ± 6.6 | 58.2 ± 6.1 |
| BMI(kg/m^2) | 22.0 ± 2.0 | 21.8 ± 1.9 | 21.9 ± 1.9 | 21.8 ± 2.0 |
| 体脂肪率(%) | 22.2 ± 3.0 | 22.1 ± 3.6 | 22.3 ± 3.5 | 22.7 ± 3.8 |
| ウエスト(cm) | 69.5 ± 5.5 | 69.5 ± 5.1 | 70.5 ± 5.7 | 69.9 ± 5.1 |
| ウエスト:ヒップ比 | 0.7 ± 0.6 | 0.7 ± 0.6 | 0.7 ± 0.6 | 0.7 ± 0.6 |
実際にこの研究では、食事が規則的だろうと不規則だろうと体型には影響がなかったのだ。



でもたった2週間だから体重もウエストも変わらなかったのでは?



実際にその通りなのですが、正直に言うと長期的なダイエット効果を調べた研究が皆無なのが現状です
1日ごとに食べる&食べないを繰り返す間欠的断食の効果は?
ここで不規則な食事パターンのダイエット効果を知る手掛かりになるのが「1日おき断食」。



1日おき断食と言うのは、1日ごとにほとんどカロリーを設定しない期間を設定する断食方法のことです
ある日は8時→12時→20時で食事をしていたのに、次の日は絶食なので食事パターンとしては極めて不規則。
この不規則な食事パターンである”1日おき断食”ですが、実は太るどころか体重が減少することが報告されている。
断食のダイエット効果を調べたメタ分析のメタ分析で、組み込まれた時間制限食は下記。
- 1日ごとに断食する(zero-calorie alternate day fasting:zero-calorie ADF)
- 自由に食べる日とほとんど食べない日(0-600kcal or 0-40%)を設定する(modified alternate day fasting:MADF)
- 週末断食(5:2ダイエット)→週に1,2日は0-600kcal
- 時間制限食(12-24時間の断食時間を設定)(time restricted eating:TRE)
結果は下記の通り。
- MADFと5:2ダイエットのみ体重減少を示した
- 5:2ダイエットを3か月間続けると、体重が1.67kg減少し、体重は6-12か月後も維持された
- 2-6か月間のMADFで徐脂肪体重が0.70kg減少し、その後6-12か月持続した
- zero-calorie ADF、TRE、RFは体重の減少と関係していなかった
- 減量アプローチとしてのIFは、初期段階(1~6か月)では成功するが、その後は代謝適応やアドヒアランスの低下によってさらなる減量は達成されないことがわかった
実際に1日ごとに断食を儲けるMADFや、週末は食べない5:2ダイエットで体重が減少したことが報告されている。
ちなみに断食戦略を摂ると、基本的に自然と摂取カロリーが減って体重が減少することが報告されている。



少なくとも「不規則な食事パターンによるマイナス効果<断食でのプラス効果」なので、食事時間が不規則なことは対して気にしなくていいのではないでしょうか
まとめ
今回は「食事時間が不規則だと太るのか?」についてまとめた。
- 食事時間が不規則だとダイエットに不利なメカニズムがある
- 食欲ホルモンの分泌と、実際の食欲が増える
- 食事性熱生産が低下する
- 食事が不規則な人ほど太っている傾向がある
- ただし生活習慣も悪い人が多いので、因果関係は不明
- 現状では食事時間が不規則でも、大したデメリットはなさげ
その日の予定によっては、どうしてもいつもと食事パターンが違ってくることもある。



そんなときにストレスを溜めるのもバカバカしいくらいの効果しかないので、気にせず好きな時間に食事を摂るのがいいと思います
参考文献
1. Nightingale. Notes on nursing, commemorative edition: What it is and what it is not. Philadelphia, PA: Lippincott Williams and Wilkins; 1992.
2. Alhussain MH, Macdonald IA, Taylor MA. Irregular meal-pattern effects on energy expenditure, metabolism, and appetite regulation: a randomized controlled trial in healthy normal-weight women. Am J Clin Nutr. 2016;104: 21–32.
3. Ahola AJ, Mutter S, Forsblom C, Harjutsalo V, Groop P-H. Meal timing, meal frequency, and breakfast skipping in adult individuals with type 1 diabetes – associations with glycaemic control. Sci Rep. 2019;9: 20063.
4. Qian J, Dalla Man C, Morris CJ, Cobelli C, Scheer FAJL. Differential effects of the circadian system and circadian misalignment on insulin sensitivity and insulin secretion in humans. Diabetes Obes Metab. 2018;20: 2481–2485.
5. Partch CL, Green CB, Takahashi JS. Molecular architecture of the mammalian circadian clock. Trends Cell Biol. 2014;24: 90–99.
6. Gill S, Panda S. A smartphone app reveals erratic diurnal eating patterns in humans that can be modulated for health benefits. Cell Metab. 2015;22: 789–798.
7. Qian J, Morris CJ, Caputo R, Garaulet M, Scheer FAJL. Ghrelin is impacted by the endogenous circadian system and by circadian misalignment in humans. Int J Obes . 2019;43: 1644–1649.
8. Qian J, Caputo R, Morris CJ, Wang W, Scheer FA. 0041 Circadian Misalignment Increases The Desire For Food Intake In Chronic Shift Workers. Sleep. 2018;41: A17–A17.
9. Alhussain MH, Macdonald IA, Taylor MA. Impact of isoenergetic intake of irregular meal patterns on thermogenesis, glucose metabolism, and appetite: a randomized controlled trial. Am J Clin Nutr. 2022;115: 284–297.
10. Sierra-Johnson J, Undén A-L, Linestrand M, Rosell M, Sjogren P, Kolak M, et al. Eating meals irregularly: a novel environmental risk factor for the metabolic syndrome. Obesity (Silver Spring). 2008;16: 1302–1307.
11. Pot GK, Hardy R, Stephen AM. Irregular consumption of energy intake in meals is associated with a higher cardiometabolic risk in adults of a British birth cohort. Int J Obes (Lond). 2014;38: 1518–1524.
12. Pot GK, Hardy R, Stephen AM. Irregularity of energy intake at meals: prospective associations with the metabolic syndrome in adults of the 1946 British birth cohort. Br J Nutr. 2016;115: 315–323.
13. Samuelson G. Dietary habits and nutritional status in adolescents over Europe. An overview of current studies in the Nordic countries. Eur J Clin Nutr. 2000;54: S21–S28.
14. Höglund D, Samuelson G, Mark A. Food habits in Swedish adolescents in relation to socioeconomic conditions. Eur J Clin Nutr. 1998;52: 784–789.
15. Patikorn C, Roubal K, Veettil SK, Chandran V, Pham T, Lee YY, et al. Intermittent fasting and obesity-related health outcomes: An umbrella review of meta-analyses of randomized clinical trials: An umbrella review of meta-analyses of randomized clinical trials. JAMA Netw Open. 2021;4: e2139558.










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