男性どれくらいで筋肉はつくの?



個人差が大きいので「そんなの知らん!」と言うのが本音ですが、今回は大体の目安を提示しておきましょう。
- 2-3ヶ月の筋トレで大体1.5kgくらいの筋肉がつく
- 筋トレでつく筋肉量には個人差が多い
- 遺伝子的に恵まれている人なら月に3kgかそれ以上の筋肉をつけることも可能
結論:筋肉は2-3ヶ月で大体1.5kgくらいつく
結論からいうと、筋肉は2-3ヶ月で大体1.5kgくらいつく可能性が高い。なので1年もすれば7kgくらいの筋肉がついて目にみえる効果が現れるだろう。
筋トレでどれくらい金肥大するのかを調べた研究で、抜き出された研究は111件。
- 組入基準
- 期間は2週間〜1年間
- 被験者は男性
- 英語で発表された文献
- ベースラインと実験後の両方で筋肥大の指標を測定
- 除外基準
- 病気の人
- 年齢が18-40歳ではない
- 被験者に女性が含まれている
- カロリー制限下での研究
- レビューであったりなど介入研究ではない
- オリジナル研究でない
- 全身の筋肉量を測定していない
- 器具じゃないトレーニング
- 数値的データがない研究
- 急性期研究
- クラス分け
- 0:座りがち(FFM = 13; LMM = 3; SMM = 0)
- 1:運動はしているがRT経験はない(FFM = 26; LMM = 13; SMM = 3)
- 2:≦RT歴1年(FFM = 8; LMM = 14; SMM = 5)
- 3:≦RT歴2年(FFM = 8; LMM = 5; SMM = 0)
- 4:RT歴2-4年(n groups: FFM = 8; LMM = 6; SMM = 0)
- 5:>RT歴4年(FFM = 7; LMM = 0; SMM = 0)



結論を言うと、この研究では筋トレ介入によって「1.53kgの筋肉がつく」と言うことが判明しました。
実際に各研究がどれくらいの筋肥大を表しているかを図にすると、下記のような感じ。
研究によって違いはあれど、大体1-2kgの筋肉量増加となっている。
加えて実験期間に関してのデータを図にすると下記のような感じ。
ほとんどの研究が2-3ヶ月なので、「どれくらいで筋肉がつくのか?」という問いに対する回答は「2-3ヶ月で1.5kgほどの筋肉増加」とするのが妥当だろう。



もちょっとまって。単に筋肉の増加が多い研究は実験期間が長いだけでは?



自分もそう思いましたが、どうやらそう言うわけでもなさそうです
というのも、実験期間の長さと筋肥大量の関係をグラフにしてみると、筋肥大と実験期間は大して相関していないのである。
そして、筋トレ初心者ばかりが筋肥大している…かというとこれまたそうでもない。
というのもこの研究では、驚くべきことに筋トレ歴と筋肥大率には関係がなかったことが報告されているのだ。
つまるところ、この研究だけを解釈するなら「筋トレ歴に関わらず2-3ヶ月で1.5kgくらいの筋肉がつく」ということになるのだ。
筋トレ初心者ほど筋肥大する?



いや、でも筋トレ初心者ほど筋肥大するに決まってんだろ?
自分の意見としては、「筋トレ歴があがるにつれて筋肥大は頭打ちになる」と言うのは意外と根拠が薄いと思います
まず筋トレしている人がつけられる筋肉量として、日本でよく引用されるのがライル・マクドナルドモデルと言うもの。
| 筋トレ年数 | 1ヶ月でつけられる筋肉量 | 1年でつけられる筋肉量 |
| 1 | 0.7-0.9kg | 9-11kg |
| 2 | 0.5kg | 5kg前後 |
| 3 | 0.2kg | 2.5kg前後 |
| 4 | わずか | 1kg前後 |
実はこのライル・マクドナルドモデル、本人ですらどこから出てきた数値なのか分からないという代物。
I’m not sure if I came up with this idea on my own or stole it from somewhere else (probably a combination of the two)
この表を自分で思いついたのか、それともどこかから盗んできたのかは自分でも覚えていない。でも多分その両方だろう。
つまり出どころ不明なうえに、おそらく自分の経験則か何かから出てきたのだろうと言っているのだ。
もちろん、経験則だからといって間違っているというつもりはない。
ただし証拠が強いか弱いかという点でいうと、正直証拠としては弱いというのが本音になる。
セット数と筋肥大の研究から考えても奇妙なことが起きている…
もう少しだけ考察すると、実は何度も動画で説明している有名メタ分析を見ても奇妙なことが起きていることがわかる。
- 週のセット数と筋肥大・筋力向上の関係を調べた
- 該当部位を直接的に鍛えたセット数を1,間接的に鍛えたセット数を0.5とカウントした
下記はセット数と筋肥大の関係をグラフにしたもので、筋トレ初心者が青、筋トレ経験者が赤で点がプロットされている。
「これは筋肉の腫れを捉えている!」と言われると面倒なので、筋肉の腫れである可能性が低い10週間以上の研究だけを抜き出した。
もし筋トレ歴が上がるにつれて筋肥大率が下がるなら、赤でプロットされた点は全体的に青の点より下にくるはず。
だが実際はそういう風にはなっていない。
ただ現実的には筋トレ経験者のほうが成長が鈍くなっているように感じがちなのは事実。
これがマインドからくるものなのか、”こなせるセット数”という現実的な問題から来るのかは不明。
あるいは神経適応が終わってしまい、筋トレに”停滞感”が出てくることも要因のひとつかもしれない。
14690人に対して筋トレ歴と筋力の伸びを調査した
筋トレ初期というのは神経適応によってガンガン重量が伸びるが、筋トレ歴が上がるにつれて神経適応の恩恵は薄れていき重量は伸びなくなってくる。
もしかしたらこの現象が筋トレに停滞感を与えて、「筋肉が最近増えていない」と言う感覚を与えてしまうのかもしれない。



この話はかなり議論の余地がありそう。
とはいえ、これ以上この話題に踏み込むと迷宮に迷い込みそうなので、ここらへんで一旦引き返しておきましょう
筋肥大率は個人差が大きい
結論として「2-3ヶ月で1.5kgくらいの筋肉がつく」と言ったが、そもそも「あなたがどれくらい筋肉がつくか」は実際に筋トレしてみないと分からない。
というのも、同じ筋トレをしていても反応にはかなり差があることがわかっているからだ。
筋肥大と筋力にはめちゃくちゃ幅がある
被験者となったのは、筋トレ経験のない男性243人&女性342人。
12週間に及ぶ上腕二頭筋/上腕三頭筋の筋トレを行わせた。
筋トレ研究では稀に見る大人数で、被験者の年齢は18~40歳と若年層なのもGOOD。
筋トレは週何回なのか不明だが、1セッションで上腕二頭筋3種目かつ上腕三頭筋2種目を各3セットこなしていたらしい。
ちなみに食事面ではいつも通りのカロリー摂取を指示されており、サプリメントとしてプロテインを摂取している人ですら除外するという徹底ぶり。
12週間に及ぶ実験終了後に上腕二頭筋の厚さと1RMを計測したところ、以下のような結果になった。
- 12週間の筋トレで、上腕二頭筋の厚さが男性で20.4%,女性で17.9%増えた!
- 12週間の筋トレで、1RMが男性で39.8%,女性で64.1%増えた!
とはいえ、これはあくまで平均値。
実際の個々人の値を見てみると非常にバラつきがあることがわかる。
- 筋肥大
- 男性被験者の筋肥大率-2.5%~+55.5%の幅がある
- これは女性も同様で、その幅は-2.3%~59.3%
- 筋力
- 男性で0%~+150%の幅
- 女性で0~250%の幅
実際には筋肥大でも、全く筋肥大しなかった人もいえば50%も筋肉を増やした人がいるのだ。
この現象は他の研究でも確かめられている。
20歳前後の筋トレ未経験者53人を対象にした研究で、同じく「筋トレにおける個人差はどれくらいあるのか?」を調べたもの
被験者には週3回のレッグエクステンションを行ってもらい、1セッションは80%1RMの重さで10回4セット。
ちなみに、この研究では食事内容は特に指示されていない。
9週間の筋トレ後に、先ほどの研究と同じように筋肉の厚さと筋力を測定したところ、以下のような結果に。
- 筋トレによって筋量が6%増えた!
- 筋トレによって筋力が17%増えた!
しかしこれもあくまで平均的な変化に過ぎない。
個々人の変化にはかなり差があったのだ。
先ほどの研究よりも被験者が少ない分バラツキは少なく、筋肥大で-3%~+18%、筋力で-1%~52%の幅となっている。
このように同じような筋トレをしていても、筋力の伸びや筋肥大には個人差があることがわかっているのだ。
なぜ個人差が生まれるのか?
そもそもなぜ個人差が生まれるの?



これには諸説ありますが、それっぽい理論があるので紹介しておきます。
それが衛星細胞による仮説。
実は筋繊維の周りには衛星細胞というものがいて、この衛星細胞が融合することが筋肥大には必要とされている。
衛星細胞が増えると、筋繊維内の核が増える…これが筋肥大には必要だとされている。
直感的には理解できる話で、たんぱく質のターンオーバーを保つためには、セントラルドグマに関わる細胞核やリボソームも筋肥大に伴って増えなければならない。
そして理論はともあれ、この衛星細胞が筋肥大の個人差に寄与していると思わせるデータがある。
被験者66人を対象にして、16週間の筋トレによる成果によって3つのグループに分けたもの。
- ノーレスポンダー(NON):筋肥大しなかった人たち17人
- 普通レスポンダー(MOD):そこそこの筋肥大をした人たち32人
- エクストリームレスポンダー:めちゃくちゃ筋肥大した人たち17人
筋肥大率によって被験者をグループ分けして衛星細胞と細胞の核数を調べたところ、次のような結果に。



見事に筋肥大が大きくなるほど、衛星細胞の数も多く筋繊維の核も多いという結果になりました
このように筋トレに対する反応というのは、一般的に思われている以上に個人差が大きいのだ。
じゃあMAXでどれくらい増えるのか?
ここで気になるのが、それじゃあ限界はどれくらいなのか?という話。
例えば先ほどのメタ分析で言えば、MAXで言えば5.62kg増えた研究がある。[8]
これは10週間の研究なので、週あたりに直すと0.56kg。
そして結論を言うと、1ヶ月で3kgほどの筋肉をつけることもできるかもしれない。
ここで参考するのが2018年の論文に対する反論に関して、著者が返したコメントである。
まず2018年の研究に関してだが、これはHMBに関する研究。[9]
この研究が報告した筋肥大が12週間で8.5kgという異常な数値だったため、他の研究者からツッコミが入ったのだ。[10]
実際にツッコミが入るのも無理はなく、これは実はステロイドを使って筋トレをした場合と同レベル。
被験者となったのは男性43人で、彼らを4つのグループに分けて10週間過ごしてもらった。
- コントロール
- 筋トレのみ
- ステロイドのみ
- ステロイド+筋トレ
| グループ | 筋肉量 |
| コントロール | +0.8kg |
| 筋トレのみ | +2.0kg |
| ステロイドのみ | +3.2kg |
| ステロイド+筋トレ | +6.1kg |
そしてこのツッコミ関する著者の反論が「他の研究でもこれくらいの筋肥大を示した研究はあるやろ!」というもので、実際の図が下記。
実は異常なほどの筋肥大を報告した研究というのはそれなりにあり、週あたり0.7kg前後…すなわち1ヶ月で3kgほど筋肉を増やす人もいるのだ。
平均値でこの値なのだから、仮に上位層に位置している場合はもっと筋肥大してもおかしくはない。
実際に物議をかもした2018年の研究では、毎週1kgという驚異的なスピードで筋肥大をした人がいたと報告されている。
さすがにこのレベルになるほど筋肥大するかは自分も怪しいと思う。
しかし1ヶ月で3kgほどであれば遺伝子的に相当恵まれていて、なおかつきちんと筋トレすれば達成できる可能性はあるのだ。
遺伝的限界はどこにあるのか?
最後に、そもそもナチュラルでどのくらいの体重まで到達することができるのか?という話題に触れてみよう。
あなたの遺伝的限界がどこにあるのかは試してみないと分からない。
しかしホモ・サピエンスの最高到達点として、Berkhanモデルという計算も超簡単でわかりやすいものがある。
これはコンテスト時のナチュラルボディビルダーを測定した値から算出されたもので、実際の計算式は以下のように非常にわかりやすい。
身長 – 100 = 体重の上限(体脂肪率4-5%のとき)
つまるところ、身長175cmの自分であれば体脂肪率4-5%で体重75kgが遺伝的(というか今までのホモ・サピエンスの)限界ということになる。
これは世界的に見たナチュラルの最高峰なので、ほとんどの人はこの値を超えていないはず。(ネット世界は別)
筋トレ歴が長くても十分に筋肥大する可能性はある。
この限界値に近づくんだ!と頑張ってみてもいいだろう。
まとめ:自分の限界を決めつけるな
今回は筋肉がつくまでの時間についてまとめた。
- 筋トレをすると大体2-3ヶ月で1.5kgくらいの筋肉がつくのがオーソドックス
- 遺伝子的に恵まれている場合は、1ヶ月で3kg以上の筋肉をつけることも可能
- 筋トレ歴が長かったとしても、実は筋肉は十分に付けられる可能性がある
「どうせ自分は遺伝的に恵まれていない…」と思うよりは、「俺は天才!ナチュラルの最高峰を目指すんや!」と思っている方が筋トレのモチベーションも上がるだろう。
あまりに無理な期待をすると失望をする可能性も否めないが、とりあえず自分にできる努力は何かを考えて頑張ってみてはいかがだろうか。
参考文献
1. Benito PJ, Cupeiro R, Ramos-Campo DJ, Alcaraz PE, Rubio-Arias JÁ. A systematic review with meta-analysis of the effect of resistance training on whole-body muscle growth in healthy adult males. Int J Environ Res Public Health. 2020;17: 1285.
2. View of The Resistance Training Dose-Response: Meta-Regressions Exploring the Effects of Weekly Volume and Frequency on Muscle Hypertrophy and Strength Gain. [cited 28 May 2025]. Available: https://sportrxiv.org/index.php/server/preprint/view/460/967
3. Steele J, Fisher JP, Giessing J, Androulakis-Korakakis P, Wolf M, Kroeske B, et al. Long-term time-course of strength adaptation to minimal dose resistance training through retrospective longitudinal growth modeling. Res Q Exerc Sport. 2023;94: 913–930.
4. Hubal MJ, Gordish-Dressman H, Thompson PD, Price TB, Hoffman EP, Angelopoulos TJ, et al. Variability in muscle size and strength gain after unilateral resistance training. Med Sci Sports Exerc. 2005;37: 964–972.
5. Erskine RM, Jones DA, Williams AG, Stewart CE, Degens H. Inter-individual variability in the adaptation of human muscle specific tension to progressive resistance training. Eur J Appl Physiol. 2010;110: 1117–1125.
6. Petrella JK, Kim J-S, Cross JM, Kosek DJ, Bamman MM. Efficacy of myonuclear addition may explain differential myofiber growth among resistance-trained young and older men and women. Am J Physiol Endocrinol Metab. 2006;291: E937–46.
7. Petrella JK, Kim J-S, Mayhew DL, Cross JM, Bamman MM. Potent myofiber hypertrophy during resistance training in humans is associated with satellite cell-mediated myonuclear addition: a cluster analysis. J Appl Physiol. 2008;104: 1736–1742.
8. Willoughby DS, Stout JR, Wilborn CD. Effects of resistance training and protein plus amino acid supplementation on muscle anabolism, mass, and strength. Amino Acids. 2007;32: 467–477.
9. Lowery RP, Joy JM, Rathmacher JA, Baier SM, Fuller JC Jr, Shelley MC 2nd, et al. Interaction of beta-hydroxy-beta-methylbutyrate free acid and adenosine triphosphate on muscle mass, strength, and power in resistance trained individuals. J Strength Cond Res. 2016;30: 1843–1854.
10. Rathmacher JA. Authors’ response. J Strength Cond Res. 2018;32: e4–e6.
11. Bhasin S, Storer TW, Berman N, Callegari C, Clevenger B, Phillips J, et al. The effects of supraphysiologic doses of testosterone on muscle size and strength in normal men. N Engl J Med. 1996;335: 1–7.










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