痩せたければ夕食を少なくしろ!
夜遅くにご飯をたべると太る!
ダイエットしたことがある人なら一度は聞いたことがあるこの言葉。
実際に正しいのでしょうか?
- 夜ごはんは太ると言われるようになった理由
- 夜ごはんが太ると言われるメカニズム
- 実際に夜ごはんを抜くことはどれだけ意味があるのか?
ようじゅ結論を言うと「夕飯を軽くするほうが痩せる」は事実ですが、実際にそこまで気にする必要はありません
観察研究では、太っている人ほど夜ごはんが遅い傾向にあった
痩せたければ夕食を少なくしろ!



今では一般常識のようになっているこの話ですが、多くの観察研究で「夕食のカロリー摂取量が多い人ほど体重が重い」ということがわかっています
110名を対象にした観察研究。
肥満の人はそうでない人より、カロリー摂取の中間値(midpoint)はメラトニン放出に1.1時間近い時間だった。
DLMOというのは、”Dim light melatonin onset”のこと。
いわゆる”生物学的夜”を表しており、学術的には夜のこのメラトニン放出からを”夜”と定義している。[2]



肥満の人ほどDLMOに近い時間にカロリーを摂取する傾向があったということは、肥満の人ほど生物学的な夜に多くのカロリーを摂る傾向があったことがわかっているということです
この観察研究の結果に加えて、「夜ご飯をたくさん食べると太る」と言えそうなメカニズムもいくつかあるために「夜ごはん=太る」というイメージが定着している。
ありそうなメカニズム①夜のほうが食事による熱産生が少ない
メカニズムの一つ目として、夜のほうが食事で刺激される熱産生が小さいことがある。
被験者となったのは普通体型の男性16人で、クロスオーバーデザイン。
- 朝食250kcal、昼食500kcal、夕食1000kcalを摂取
- 朝食1000kcal,昼食500kcal、夕食250kcalを摂取
クロスオーバー試験というのは、被験者が1つの条件をこなした後にウォッシュアウト期間を設けてもう1つの条件をこなす実験方法です。
結果として、食事誘導性熱産生は夜の方が朝よりも50%も低かったことが報告されている。



この研究は「夕飯を食べると太る理由」としてもよく引用されますが、実際の数値を見てみると「おやおや…?」となってくることが分かります
- 朝➡0.24kcal/min
- 夜➡0.13kcal/min
夕食による食事誘導性熱産生は確かに相対値で考えると朝より50%ほど低いとはいえ、その絶対値はたったの1分当たり0.11kcal。
1時間で考えても7kcal未満という微々たる値になっている。



実際にこの値にどれくらいの意味を見出すかはその人次第で、自分の場合は「正直意味ない」と思います
ありそうなメカニズム②エネルギー消費量が増える



「夕飯を食べると太る」の2つ目のメカニズムが、エネルギー消費量に関する話です
実際に食事の時間を後ろにずらしたところ、エネルギー消費量が減少したことが報告されている。
- 午前8時、正午、午後4時に食事を摂取
- 正午過ぎ、午後4時、午後8時過ぎに食事を摂取
食事時間を4時間後ろにずらしたパターンと比較した研究になります
結果は下記の通り
- 就寝時間が遅いと、24時間の体温が低下する
- 遅い時間に食事をした場合、覚醒時のエネルギーが5%(59.4kcal)減少する
- レプチン値が16%低下した
夜遅くの食事で体温が低下し、覚醒時のエネルギー消費量が60kcalほど減少したことが報告された。



体温というのは熱産生の副産物なので、代謝の代用エンドポイントとして測定されています
なぜこのようなことが起こるのか、詳しいメカニズムは不明。
この研究では代謝に関係するレプチンというホルモンが測定されており、その値が16%低下したことも報告されている。



このホルモンの変化によってエネルギー消費量が下がるのかは定かではありませんが、実際にエネルギー消費量が減る可能性があるのは事実です
ありそうなメカニズム③食欲の問題



「夜ごはんが太る」の3つ目のメカニズムが、食欲の問題です
先ほどの研究では、食欲に関する結果も報告されている。
- 午前8時、正午、午後4時に食事を摂取
- 正午過ぎ、午後4時、午後8時過ぎに食事を摂取
夜遅くに食事を摂ることによって、空腹度が50を超える確率が10-20%上昇したことが報告されている。(0-100のスケール)
さらにこの研究では食欲を抑えるレプチンと食欲を増加させるグレリンが測定されており、レプチン:グレリン比が34%増加したことも報告されている。



食欲に関するホルモンが原因なのかは不明ですが、この現象は他の研究でも確認されています
普通体型の男性16人を対象にしたもので、食事配分で2つのグループに分けた。クロスオーバーデザイン。
- 朝食爆食いグループ:カロリー配分を”朝1000kcal、昼500kcal、夜250kcal”で摂取
- 夕食爆食いグループ:カロリー配分を”朝250kcal、昼500kcal、夜1000kcal”で摂取
まずカロリー配分によって変わらなかった部分から紹介。
- カロリー配分とは無関係に、夕食前よりも朝食前のほうが空腹感が高かった
- カロリー配分とは無関係に、甘いものへの食欲は朝食後のほうが夕食後より高かった
そしてカロリー配分によって違いがあった結果は下記の通り。
- 低カロリーの朝食から5時間後には空腹感が増加し、その空腹感は夕食前まで持続した(14時から19時まで空腹だった)
- 一方で高カロリーの朝食から5時間後には空腹感が減少した
- そして高カロリーの夕食を摂った場合は、低カロリーの夕食と同じくらいまで食欲が減少した
一言で言ってしまえば、夕食を軽くした(というか朝食を重くした)グループのほうが1日を通して食欲が低かったことが報告されている。
他にも夕食を抜くことで、食欲が低下したことを報告した研究もある。
普通の食事 vs 6時間のTRFで代謝マーカーを比較
- 午前8時~午後8時まで食事を摂取
- 午前8時~午後2時まで食事を摂取
健康の指標が改善した以外に、この研究では夕方の食欲も低下したことが報告されている。
この研究はいわゆる16時間断食(正確には18時間断食)なので夕食を抜いた効果というより”時間制限食”を使ったことによる効果である可能性はある。



とはいえ多くの研究で夕食を軽くする(=朝食を重くする)ことで食欲が抑えられるという結果が得られているのは事実です
ありそうなメカニズム④夜遅くにご飯を食べると遺伝子発現的に不利
「夕食をたくさん食べると太る」理論のメカニズム4つ目は、遺伝子に関する話。



またまた先ほどの研究に登場してもらいましょう
- 午前8時、正午、午後4時に食事を摂取
- 正午過ぎ、午後4時、午後8時過ぎに食事を摂取
この研究では遺伝子の発現も調べられており、結果は下記のようになっています
- 夜遅くの食事は脂肪分解に関わる遺伝子をダウンレギュレートした
- PLD6, DECR1, ASAH1
- 夜遅くの食事は脂肪合成に関わる遺伝子をアップレギュレートした
- GPAM, ACLY, AACS, CERK
たくさん遺伝子の名前が書いてありますが、要は「夜ご飯を食べると遺伝子発現が脂肪合成有利になる」ということ。
この遺伝子の問題でよく出てくるのが「BMAL1(ビーマル1)」と呼ばれる遺伝子。



BMAL1というのは日本人が発見した遺伝子で、食事性脂肪の吸収を促進する効果があります
実際にBMAL1を働かないようにしたマウスは、高脂質の食事を与えても肥満にならないことが分かっている。
BMAL-1をノックアウトしたマウスは、高脂質の食事を与えても肥満にならなかった。
このBMAL1は日内変動があり、午後3時が最も分泌量が低く、午後9時以降が分泌量が多い(らしい)。



BMAL1の日内変動に関する記事はたくさん見つかりましたが、実際に元となっているリファレンスは見つからず…もし知っている人がいたら教えてください
仮にこのBMAL1の日内変動が正しいのなら、理論的には確かに夜の食事は太りやすいということになる。
しかし、理論的には正しくても実際の効果は微々たるものという例はたくさんある。
このBMAL1に関しても、BMAL1の分泌に合わせた生活をしてどれだけ体重が減るのかは未知数なのだ。
余談だがBMAL-1なんて無ければいいのに!と思う人もいるかもしれない。



しかしBMAL1の欠損はマウス研究で色々な病変をもたらすことが報告されているので、仮にBMAL1をノックアウトするサービスが出てきても使わないことをオススメします[7]
夜遅くの食事で太るメカニズムまとめ
このようにメカニズム的には正しそうな「夜ごはんを食べると太る」理論。
本記事でもたくさん登場した2022年の研究のビジュアル要約が分かりやすいので掲載しておく。
夜の食事が健康に悪いというメカニズムもたくさんある
そして健康の問題においても、「夜ご飯は体に悪そう」と言えるような結果がたくさん出ています。
日勤 vs 夜勤を比較
- 13時と19時に食事、16時に間食
- 1時と7時に食事、4時に間食
➡耐糖能や耐脂能は昼グループのほうが良かった
14人の成人男性を対象にしたランダム化クロスオーバーデザイン。
通常の睡眠/覚醒サイクルで3日間入院→その後2つの条件で4日間入院。
- 同じ睡眠/覚醒サイクルで4日間入院する
- 睡眠/覚醒サイクルを12時間ずらして4日間入院する
➡朝のほうが膵臓のベータ細胞の機能が高かった
➡サーカディアンリズムのズレはインスリン感受性の低下を引き起こした
遅い昼食(16:30)と早い昼食(13:30)を比較したランダム化試験。
➡早い昼食のほうが血糖反応が良好だった
被験者は2型糖尿病の肥満者。実験期間は7日間のクロスオーバーデザイン。
- 早期の15時間断食(午前8時から午後5時まで食事)
- 後期の15時間断食(正午から午後9時まで食事)
→早期に食事をしたほうがグルコース動態がよかった



このように多くの研究が「夕食=悪者」という結果になっていることもあり、夕食はあまりたくさん食べないほうがいいという一般常識が生まれました。
観察研究は?
理論的には正しそうな「夕食を少なくするほうが痩せる」理論。



ここからは実際に体重を調べた研究を見てみましょう
メタ分析では夕食が有利
「夕食を軽くする方が痩せるのか?」を調べたのが2017年のメタ分析。
この研究では”観察研究のメタ分析”と”ランダム化試験のメタ分析”の2つが行われています。
まずは観察研究のメタ分析から。
- 観察研究の組み入れ基準
- cohort studies / cross-sectional studies / case–control studies
- 18歳以上を対象にしたもの
- 夜間に消費されたエネルギー割合が計算できる
- アウトカムは体重、BMIなど
- 除外基準
- 小児の研究
- 交代勤務で働いている人
- 夜食症候群の患者
- ラマダン研究(夜明けから日没まで食事しない)
最終的にこの論文に抜き出された研究は10件。
| 著者 | サンプル | デザイン | 定義 | 暴露群 | 比較群 | アウトカム | 結果 | P値 | 結論 |
| Aljuraiban(2015) [13] | 男女2385人 | 横断研究 | 朝食→6:00-11:55夕食→18:00-23:55 | 夕食:朝食の比が2以上 | 夕食:朝食の比が1以下 | BMI | 暴露:28.7±11.2比較:27.5± 10.0 | 0.08 | 朝と比べて夜の摂取量が多い人は、BMIと正の相関があった |
| Almoosawi(2013) [14] | 男女1253人 | コホート | 朝食、午前中、昼食、午後、夕食、夜遅くに分類したうちの夕食と夜遅く | 夕食の摂取量が上位20% | 夕食の摂取量が下位20% | BMI | 暴露24.4± 3.6比較24.5±3.6 | → | – |
| Baron(2011) [15] | 男女52人 | 横断研究 | 20時以降の食事 | 夜8時以降のエネルギー摂取量(早寝) | 夜8時以降のエネルギー摂取量(遅寝) | BMI | 相関係数0.37 | BMIと夜の食事量が相関 | 遅寝の人ほど、夕食のカロリー摂取量が多く、夜8時以降の摂取量が多く、ファストフードを多く摂取しており、カロリーのある飲み物を多く摂取しており、果物や野菜の摂取量が少ない |
| Bo(2014) [16] | 男女1245人 | コホート | 19-22時の食事 | 夕食で48%以上を摂取 | 夕食の摂取が33%以下 | BMI | 暴露群25.5±3.2比較群24.8±3.1 | <0.01 | 夕食が占めるエネルギー割合が高くなるほど、肥満やメタボの有病率が上がる |
| Kant(1995) [17] | 男女1802人 | 横断研究 | 17時以降の食事 | 夕食の摂取量が多い上位33% | 夕食の摂取量が少ない上位33% | BMI | 暴露群24.6±12.7比較群24.4±8.5 | → | BMIは夕食の摂取量と関連していなかった |
| Kant(2006) [18] | 男女39094人 | 横断研究 | 17時以降の食事 | 夕食からのエネルギー摂取量%TDEI from evening | – | 相関係数 | Correlation coefficient(β) -0.0005 | 0.06 | – |
| Morse(2006) [19] | 男女714人 | 横断研究 | 夕食の時間(supper time)以降 | 夕食以降に25%以上を摂取 | 夕食以降の摂取が25%以下 | オッズ比 | 暴露群2.6比較群1.0 | – | 糖尿病患者の9.7%が夜食行動を取っていた。夜食行動のある患者は、肥満である可能性が高かった(オッズ比2.6) |
| Striegel(2006) [20] | 男女29148人 | 横断研究 | 19-5時の食事 | 夕食以降に25%以上を摂取 | 夕食以降の摂取が25%以下 | BMI | BMIが0.44kg少ない | – | 夜食の摂取は肥満と関連がなかった |
| Summerbell(1996) [21] | 男女187人 | 横断研究 | 夕食の食事 | 夕食の摂取量が多い上位33% | 夕食の摂取量が少ない上位33% | BMI | – | >0.05 | 思春期→間食と朝食のエネルギー摂取量が多いことが低BMIと関連中年期→朝食の摂取量が多く夕食が少ないことが低BMIと関連➡️これらの結果は、不自然に低いエネルギー摂取量を除外したところ中年世代では関連性が消失した |
| Wang(2014) [22] | 男女326人 | 横断研究 | 17-0時の食事 | 夕食以降に33%以上を摂取 | 夕食以降の摂取が33%以下 | オッズ比 | 暴露群2.0比較群1.0 | – | 1日の総エネルギー摂取量の33%以上を夜に摂取した人は、肥満である確率が高い |
個々の研究を見てみると、「夕食が軽い人ほど体重が軽い」ということを示したのが10件中5件。
実に半数の研究が夕飯が軽い人に有利な結果となっている。
そしてこの中からさらに精査して5件抜き出し、実際にメタ分析を行った。
メタ分析の結果として、夕食を軽くする方がBMIが0.39低いという結果になった。
観察研究のメタ分析では、確かに「夜ごはんが軽い人ほど体重も軽い」という結果になったのだ。
因果と相関は違う
しかし、観察研究には相関関係は分かるが因果関係は分からないという欠点がある。



実際に個々の研究を見てみると、そのことがよくわかります
被験者となったのは男女52人で、入眠時間が遅い vs 早いで比較した
結果は下記の通り。
- 朝食を抜く人の割合は一緒だった
- 総カロリー摂取量は同じだった(1905kcal vs 2153kcal)
- 遅寝の人は・・・
- 夕食時のカロリー摂取が多い
- 午後8時以降のカロリー摂取量が多い
- ファストフードの摂取が多い
- カロリーのある炭酸飲料を多く摂取している
- 果物や野菜の摂取量が少ない
- BMIは下記の要素と正の相関を示した
- 就寝時間の遅さ
- 午後8時以降に消費するカロリー
- ファストフードの消費
- 20時以降のカロリー摂取量は、BMIの独立した予測因子だった
この研究では午後8時以降の人ほどBMIが高かったことが報告されている。
しかしそれと同時に、夜遅くに食事を摂る人は野菜や果物の摂取量が半分で、ファストフードと炭酸飲料の摂取量は2倍というひどさ。
実際に夕食をたくさん食べたから太っているのか、そもそも夕食をたくさん食べる人は生活習慣が終わっているのかがわからないのだ。



実際に摂取カロリーは統計的には有意差がないとはいえ、ほぼ有意差(P=0.10)でカロリーが平均して248kcal多かったことが報告されています
ランダム化試験ではどうなのか?



観察研究では相関はわかっても因果関係が分からない…ということでこのメタ分析では「夕食軽め vs 夕食重め」にグループ分けしたランダム化試験のメタ分析も行われています
- 臨床研究の組み入れ基準
- 18歳以上
- 期間は4週間以上
- 無作為化または非無作為化研究
- サーカディアンリズムによる違いを変数とした、最低2つの群を有している
- 治療間で等エネルギー、または参加者の推定エネルギー摂取量に基づいて標準化された1日のエネルギー処方がなされている
- 体重変化をアウトカムにしている
- 除外基準
- シフト勤務者
- 夜食症候群の患者
- 強制的な非同調プロトコルの研究
最終的に抜き出された研究は8件。
| 著者 | サンプル | デザイン | 群1 | 群2 | 群3 | 生活 | 結果(群1) | 結果(群2) | 結果(群3) | P値 |
| Caviezel(1984) | 男女52人 | 30日の減量 | 590kcalを9時に摂取 | 590kcalを18時に摂取 | 590kcalを8時:12時:18時=16:42:42で摂取 | Labo | -7.9kg | -8.1kg | -5.5kg | P<0.05(夕食 vs 3食) |
| Del(1984) [23] | 男女10人 | 18日の減量 | 683kcalを10時に摂取 | 683kcalを18時に摂取 | – | Labo | -6.86kg | -6.57kg | – | → |
| Jakubowicz(2012) [24] | 男女193人 | 16週の介入+16週のフォローアップ | <女性>1378kcalを43:36:21で摂取<男性>1575kcalを38:38:24で摂取 | <女性>1378kcalを21:36:43で摂取<男性>1575kcalを19:38:43で摂取 | Free | -13.6kg/-20.6kg | -15.3kg/-3.5kg | 0.11/<0.001 | ||
| Jakubowicz(2013) [25] | 女性93人 | 12週の減量 | 1399kcalを50:36:14で摂取 | 1399kcalを14:36:50で摂取 | Free | -8.7kg | -3.6kg | <0.0001 | ||
| Keim(1996) [26] | 女性12人 | 6週間×2回の減量 | 朝食:昼食:夕食:夜食=35:35:15:15 | 朝食:昼食:夕食:夜食=15:15:35:35 | Labo | -3.90kg | -3.27kg | <0.01 | ||
| Lombardo(2014) [27] | 女性42人 | 3ヶ月の減量 | 朝食と昼食で70%、夕食以降で30% | 朝食と昼食で30%、夕食以降で70% | Free | -8.2kg | -6.5kg | P=0.028 | ||
| Madjd(2016) [28] | 女性80人 | 12週間の減量 | 朝食:間食:昼食:夕食=15:15:50:20 | 朝食:間食:昼食:夕食=15:15:20:50 | Free | -5.73kg | -4.3kg | P=0.002 | ||
| Sensi(1987) [29] | 男女25人 | 18日の減量 | 683kcalを10時に摂取 | 683kcalを18時に摂取 | Labo | -0.348kg/day | -0.359kg/day | – |
夕食を重めにしたほうが有利という結果を示したのは、8件中1件だけ。
それに対して、8件中4件が夕食は軽くしたほうが体重減少に有利だったことが報告されている。
この8件の中からさらに精査して5件の研究を抜き出し、メタ分析した結果が下記。
結果自体は夕食を軽くする方が有利(左)に傾いているが、0をまたいでいるので有意差があるとは言えないという結果に。



有意差なしという結果ではありますが、確かに夜ご飯を軽くすることはメリットこそあれデメリットはないと言えそうです
夕食を重くした研究



ここからはもう少し個々のランダム化試験を見てみましょう
夕食の配分を変えた
まずは「夕食を軽くしたら、体重が減ってウエストが補足なった」という研究から。
メタボリックシンドロームの女性を2グループに割り当てた。実験期間は12週間。
- BF(breakfast)➡朝食700kcal、昼食500kcal、夕食200kcal
- D(Dinner)➡朝食200kcal、昼食500kcal、夕食700kcal
コンプライアンス違反(10%以上の過剰カロリー)が週3回以上あった被験者は除外。
食事は指示されており、カロリーは固定。
結果としては、夕飯を軽くしたほうが総じて有利だった。
- 朝食群は体重とウエストが減った
- 空腹時結党、インスリン、HOMA-IRは朝食群で大きく減少した
- 平均中性脂肪値は朝食群で-33.6%、夕食群で+14.6%だった
- 経口ブドウ糖負荷試験では、朝食群でより大きな血糖値とインスリン値の減少が見られた
- 食事負荷試験では、朝食群で1日の血糖値、インスリン値、グレリン値、返金空腹スコアが低かったのに対して、満腹スコアは有意に高かった



実際に体重とウエストの変化を見ても、夕食が軽い方に有利なことが分かります
時間をずらした
次に食事の配分ではなく、「食事を摂取する時間が早い人ほど痩せた」という研究も紹介する。
男女420人を対象にした、20週間におよぶ減量介入の一部。被験者は肥満体型。
最も多い食事(地中海式なので昼食)を午後3時前に摂る or 午後3時より後に摂るで分けた。
結果として、早い時間に食べるグループのほうが体重が落ちた(そしてインスリン抵抗性も低かった)。
ちなみに摂取カロリー(早い2016kcal vs 遅い2006kcal)も消費カロリーも同じだったことが報告されている(早い2376kcal vs 遅い2295kcal)。
夜ご飯を抜いたら筋肉が落ちた



「夕食を抜いたところ、体重が落ちた」という研究も存在します
90人の被験者を対象に、「普通の食事 vs eTRF」を比較した
- 一般的な食事パターン
- 午前7時-午後15時まで食事をする
結果としては下記の通り
- 体重は夜ご飯を抜いたグループのほうが減少した(一般-4.0kg vs 夕食抜き-6.3kg)
- 体脂肪量はどちらも同じくらい落ちた(一般-3.4kg vs 夕食抜き-4.7kg)
体重こそ夕食抜きのほうが落ちたが、体脂肪の減少量は変わらなかった。
時間制限食は筋トレと組み合わせれば筋肉量が落ちないが、筋トレをしていない場合は筋肉が落ちる可能性がある。



この記事を見ている人の大半は筋トレをしている人だと思うので、この結果は気にしなくても問題ありません
食事配分を変えても同じだった



ここまで来ると「痩せるには夕食を軽くしなきゃ!」となりそうですが、夕食を軽くしても体重減少に影響がなかったとする研究も普通にあります
被験者となったのは肥満の男女30人。4週間に及ぶクロスオーバーデザイン。
- 朝食:昼食:夕食=45%:35%:20%で摂取
- 朝食:昼食:夕食=20%:35%:45%で摂取
結果として、どちらも同じくらい体重が減った(-3.33kg vs -3.38kg)。
このように食事の配分を変えても一切効果がなかった、とする研究もある。
食事の配分を前に倒すと効果があるかもしれないけど…



朝食を抜いたほうが良いと言ったり、朝食を食べた方が有利かもと言ったり…結局どっちにすればいいの?



この問題に決着をつけるために、良い感じの超長期研究があるのでそちらを見てみましょう。
対象となったのはBMI22-27.9の男性。ランダムに2つのグループに割りつけられ、2年間に及ぶ25%のカロリー制限をしてもらった。
カロリー摂取量が総カロリーの50%に到達するまでの時間を変数として、モデルを構築した。
- モデル1:体重変化(%)=カロリー制限(%)+カロリーが50%に達するまでの時間+その交互作用
- モデル2:体重変化(%)=カロリーが50%に達するまでの時間
- モデル3:カロリー制限(%)=カロリーが50%に達するまでの時間
結果としては下記の通り。
- カロリー制限は分散の39.9%を説明した(モデル①)
- カロリー摂取の時間帯は分散の1.8%(モデル①とモデル②)と2.2%(モデル③)を説明した
一言で言ってしまえば、夕食を軽くするメリットは確かにあるがその効果はダイエットにおいて2%くらいしかないということになる。
この数字に意味を見出すかはその人次第で、1%でもダイエット効率を高めたいという人は実践してみてもいいかもしれない。
一方で、そんな細かいことなんていちいち気にしていられないという人は、食事の配分なんて気にするだけストレスになるだけ。



実際に自分もこんな細かいことは気にしない派です
夕食を軽くすることはメリットは確かにあるが、そこまで躍起になって実践するほどではないのではないかと思う。
見落とされがちな夕食のデメリット
それでは夕食はどれだけ重くしていいのかというと、じつはヘビーな夕食は唯一にして無二の欠点がある。
というのも、寝る前の食事がヘビーなほど睡眠が悪化することがわかっている。
健康な男女52人を対象にした研究。寝る前の摂取カロリーと入眠までの時間を調べた
実際の結果がこちら。
このグラフは縦軸に摂取カロリー、横軸に”睡眠潜時(Sleep latency)”と呼ばれる入眠するまでにかかる時間をとったもので、女性を対象にこれらの関係性を直線で近似したのが太い線。
摂取カロリーが大きいほど入眠までに時間がかかり、睡眠が悪化していることがわかる。(相関係数0.67)



ちなみに男性を対象にした細い線は相関なしとなっており、その理由は不明です
この研究では3大栄養素のことも調べられており、睡眠を乱す効果が特に大きいのが脂質。



消化に時間がかかる脂質を寝る前に摂ると睡眠が悪化する可能性が高いので、もし睡眠の質が悪くて困っている場合は夕食を他の食事に振り分けてみるのがいいかもしれません



じゃあどれくらい夕食が重かったら睡眠が乱されるの、、、?



先ほどの2020年の研究を見てみましょう
食事配分を変えたこの研究だが、睡眠が変わらなかったことが報告されている(P=0.409)。
被験者となったのは普通体型の男性16人で、クロスオーバーデザイン。
- 朝食250kcal、昼食500kcal、夕食1000kcalを摂取
- 朝食1000kcal,昼食500kcal、夕食250kcalを摂取



この研究を見ると1000kcalくらいなら睡眠に影響しないかもしれませんが、1500kcal,2000kcalとなってくると睡眠を乱されるかもしれません
睡眠が悪いと体型にも悪い



そして言うまでもなく睡眠は体型に悪いということも付け加えておきます
被験者となったのは肥満男女10名。2週間に及ぶカロリー制限をしてもらったクロスオーバーデザイン。
- 8.5時間寝る
- 5.5時間寝る
カロリー制限中に睡眠時間を制限してもらった研究で、結果は下記の通り。
この研究では落とした体重こそ同じだが、睡眠を制限すると脂肪はあまり落ちずに筋肉ばかりが分解されたことが報告されている。
2017年の研究では「睡眠が悪化すると満腹を知らせるホルモンであるペプチドYYが減り食欲が増進する」ことが報告されていたりと[36]、言わずもがな睡眠はダイエットに重要。



もし夕食が重すぎて睡眠が悪化しているという自覚があるなら、食事配分を見直すか夕食の時間を少し早めてみるのが良いかと思います
まとめ
今回は「夕食を軽くするほど痩せるのか?」についてまとめた。
- 夕食を軽くするほど痩せるのは事実
- しかし、夕食を減らすことによるダイエットの効果はたった2%ほど
- 睡眠が悪いという自覚がある人は、夕食を他の食事に配分するか夕食を早くしてみるのもあり
夕食を軽くすることは確かにメリットこそあれ、その効果は2%ほど。
実際に朝食を重くして夕食を軽くするという戦略は、現代人の生活に合わないことも多い。
- 昼間は”仕事”によって食欲が気にならない可能性が高い
- 夜の食事はマインドフルに食べやすい



これらの条件を考えても、(睡眠が悪化しない限り)夕食を多めにとっても全然問題ないかと思います
参考文献
1. McHill AW, Phillips AJ, Czeisler CA, Keating L, Yee K, Barger LK, et al. Later circadian timing of food intake is associated with increased body fat. Am J Clin Nutr. 2017;106: 1213–1219.
2. Panda S. Circadian physiology of metabolism. Science. 2016;354: 1008–1015.
3. Richter J, Herzog N, Janka S, Baumann T, Kistenmacher A, Oltmanns KM. Twice as high diet-induced thermogenesis after breakfast vs dinner on high-calorie as well as low-calorie meals. J Clin Endocrinol Metab. 2020;105: e211–e221.
4. Vujović N, Piron MJ, Qian J, Chellappa SL, Nedeltcheva A, Barr D, et al. Late isocaloric eating increases hunger, decreases energy expenditure, and modifies metabolic pathways in adults with overweight and obesity. Cell Metab. 2022;34: 1486–1498.e7.
5. Sutton EF, Beyl R, Early KS, Cefalu WT, Ravussin E, Peterson CM. Early time-restricted feeding improves insulin sensitivity, blood pressure, and oxidative stress even without weight loss in men with prediabetes. Cell Metab. 2018;27: 1212–1221.e3.
6. Yu F, Wang Z, Zhang T, Chen X, Xu H, Wang F, et al. Deficiency of intestinal Bmal1 prevents obesity induced by high-fat feeding. Nat Commun. 2021;12: 5323.
7. Zheng Y, Pan L, Wang F, Yan J, Wang T, Xia Y, et al. Neural function of Bmal1: an overview. Cell Biosci. 2023;13: 1.
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