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筋肉をつけたいとき、1日に必要なタンパク質量はどれくらい?

男性

1日のたんぱく質量ってどのくらい摂ればいいの?

今回はよく聞かれるこの疑問に答えていく回。

今回は簡単のため「ダイエットしていない&筋トレをしている」という条件で考えておこう。

今日のまとめ
  • たんぱく質をあんまり摂りたくない人は1.6g/体重でOK
  • それなりにしっかり体づくりしたい人は2.0g/体重でOK
  • 筋肉を1gでも多くつけたい場合は2.4g/体重でOK
ようじゅ

結論をいうと「細かく考えたくないなら2.0g/体重でよくね?」になります

目次

まずは「タンパク質を1.62g/体重」を示した2017年の超有名研究から

ようじゅ

まずは「タンパク質は1.62g/体重を摂れ!」として、誰もが知っている超有名な研究から見てみましょう

  • プロテインサプリが筋肥大に与える研究を調べた研究
  • 組入基準
    • 筋トレとタンパク質サプリを組み合わせた研究
    • 期間は6週間以上
    • 筋トレの頻度は最低でも週2
    • 少なくとも片方のグループがプロテインサプリをしてもらっている
    • 健康でカロリー制限をしていないヒト
  • 被験者の総数は1863人
  • メタ回帰分析
    • ランダム効果メタ回帰モデル
    • 共変量は4つ
      • baseline protein intake
      • protein dose
      • age
      • training status
  • サブグループ解析
    • 45歳以上をold、45歳以下をyoungとしてFFM・1RMに関してサブグループ解析をした
  • ブレイクポイント分析
    • daily protein intakeとbaseline protein intakeの両方に対して、linear regressionとsegmental regressionを行った
    • 区分回帰が最適なモデルの場合、2つ目の直線の傾きを0に設定してブレイクポイントを決定した
    • 有意水準はp=0.05で、ブレイクポイントは95%信頼区間で表示した
ようじゅ

この有名な研究にはプロテイン補給の効果とブレイクポイント分析の結果という主に2つの結果があります

結果①プロテイン補給の効果

まず結果の一つ目は、プロテイン補給の効果に関する話。

ようじゅ

これはプロテイン補給をした結果、1日のプロテイン摂取量が増えたというもので、正直言うと特に面白いものではありません

  • 被験者は1863名
  • プロテイン補給群は有意に1日のタンパク質量が増えた(23 ± 41g / day, p=0.004)
  • コントロール群は1日のタンパク質量が増えなかった(1 ± 14g / day, p=0.83)
  • プロテイン群のほうが有意に1日のタンパク質摂取量が多かった(p=0.01)
  • 1日のたんぱく質摂取量はプロテイングループで有意に向上した(pre: 1.4±0.4, post: 1.8±0.7, Δ: 0.3±0.5 g/kg/day, p=0.002)
  • 1日のたんぱく質摂取量はコントロールグループでは向上しなかった(Δ protein group: 50±293 kcal/day, Δ control group: 70±231 kcal/day, p=0.71)

結果②ブレイクポイント分析の結果

そして次はブレイクポイント分析の結果を見てみよう。

全被験者を同一プールした場合は、線形回帰よりも区分回帰がより多くの分散を説明した。
(break point=1.62 (1.03, 2.20) g/kg/day, slope=1.75, R2=0.19, df=36) 

つまるところ、このグラフを表すには直線一本で近似するよりも1.62gを境に2つの直線で表したほうがいいモデル化ができていると言うこと。

そして境目となるブレイクポイントだが、95%信頼区間は”1.03g/体重 〜 2.20g/体重”となっている。

ようじゅ

言い換えるなら、”母集団”のブレイクポイントは1.03g/体重〜2.20g/体重のどこかにあるという話になります

母集団というのは、語弊を恐れずに言えば”人類全体”のこと。

実際のデータは、この”人類全体”から得られたサンプルにすぎない。

このサンプルを元に”人類全体”のデータを逆算すると、ブレイクポイントは大体1.03g/体重〜2.20g/体重と推定できることになる。

おまけ:メタ回帰分析の結果

おまけだが、この研究ではベースラインのたんぱく質摂取量と筋肉量変化(プラセボとプロテイン摂取群の差)について、年齢別でまとめられていたりする。

ようじゅ

研究に載っていたので一応掲載しておきますが、特に面白い内容ではありません

  • A:全被験者
    • 「プロテイン ー コントロール」を比較したもの
    • 横軸は”ベースライン”のたんぱく質摂取量
    • 0.64kg [0.02, 1.26]
    • P=0.045
  • B:老人の被験者
    • 「プロテイン ー コントロール」を比較したもの
    • 横軸は”ベースライン”のたんぱく質摂取量
    • 0.46kg [-4.07, 5.00]
    • P=0.79
  • C:若い被験者
    • 「プロテイン ー コントロール」を比較したもの
    • 横軸は”ベースライン”のたんぱく質摂取量
    • 0.33kg[-0.55, 1.22]
    • P=0.43
  • D:線形回帰
    • ベースラインのたんぱく質摂取量とΔFFMの関係を、年齢別に線形回帰した
    • 年齢別にすると、線形回帰は区分回帰よりも有意に多くの分散を説明した
      • 若年層[slope = -1.54g/kg, R^2 = 0.17, df=34]
      • 老人[slope = 0.16g/kg, R^2 = 0.04, df=14)

女性のプロテイン量について

先ほどのメタ分析から、95%信頼区間でいうと1.03g/体重 〜 2.20g/体重らへんがブレイクポイント(頭打ちになる点)だということがわかった。

しかし、先ほどの研究にはひとつ欠点がある。

それは男性の研究がほとんどだということ。

ようじゅ

これは筋トレ研究あるある。この分野では男性の被験者が多くなりがちなのが常です

ということで、実際に「女性のたんぱく質摂取量はどうなの?」という研究が行われている。

女性を被験者に、1日のたんぱく質必要量を調べた。

用いられたのはIAAO法(Indicator amino acid oxidation)と呼ばれるもの。

従来の窒素バランス法とIAAO法

IAAO法とは、”Indicator amino acid oxidation”の頭文字をとったもの。

2008年のレビューにその理論や応用方法が記載されている。 [3]

実はこれまでよく使われていたnitrogen balance methods(=入っていった窒素と出ていった窒素の差が0となる点を求める方法)というものがあるが、窒素排泄量(尿や糞便、毛髪、爪、汗など)を正確に評価できないという欠点があった。

[jinr_fukidashi1]

窒素というのは皮膚や呼気からも失われるが、この窒素バランス法では尿や糞便を測って終わりというパターンも多かったみたいです

[/jinr_fukidashi1]

さらに実際に平衡点を求めるというよりは、平衡点周りの測定値からモデル化して平衡点を求めることが多かった。

そのうえ直線でモデル化できない(=非線形)であるなどの理由も重なり、たんぱく質必要量を過小評価すると懸念されていたのだ。

このデメリットは知られてはいたものの、20世紀は他の有望な選択肢もなかったため、この窒素バランス法を仕方なく使っていた。

最近流行りの(?)IAAO法

そんなときに登場したのがIAAO法というもの。

基本的には「1つの必須アミノ酸が不足すると、指標アミノ酸(通常はC13で追跡可能にしたL-フェニルアラニン)を含む、他のすべてのアミノ酸が酸化される」という概念に基づいている。

順を追って説明すると、アミノ酸は(貯蔵することができないため)タンパク質への取り込みと酸化の2通りで処理される。

[jinr_fukidashi1]

ここで制限アミノ酸といってある種のアミノ酸が足りないと、材料不足により他のアミノ酸もたんぱく質になれません

[/jinr_fukidashi1]

よって指標アミノ酸は理論上はすべて酸化されることになる。

その状態から制限アミノ酸の摂取量が増加すると、指標アミノ酸の酸化は減少し、タンパク質への取り込み(たんぱく質生成)が増加して酸化が減少する。

そして制限アミノ酸の摂取量が必要量を満たすレベルまで高まると、たんぱく質への取り込みもなくなり酸化は一定の値となる。

この指標アミノ酸が一定の値になったポイントこそ、1日に必要なたんぱく質摂取量ということになる。

ようじゅ

説明が長くなってしまったので、実際の結果を見てみましょう

Relationship between protein intake and phenylalanine oxidation (PheOx).

  • ブレイクポイントは体重あたり…
    • 平均:1.53g/kg/day
    • 95%CI:1.85g/kg/day
  • 徐脂肪体重あたり
    • 平均:2.03g/kg/day
    • 95%CI:2.47g/kg/day

女性でも平均1.53g/体重、95%信頼区間の上限は1.85g/体重となっている。

男性よりやや低い値となっていますが、これは女性のほうが体脂肪が多く筋肉量が少ないからと言われている。

ようじゅ

実際にこの後に紹介する男性の研究では、体重あたりのタンパク質量は女性より多いですが、筋肉量あたりで考えると男性と同じことが報告されています<

IAAO法を用いた研究の男性ver

トレーニングオフ日のたんぱく質必要量を求めた

トレーニングしていない日のタンパク質摂取量をIAAO法で求めた研究。

被験者はボディビルダー。

こちらも同じIAAO法でたんぱく質の必要量を求めたというもの。

実際に研究の結果を見てみよう。

  • 体重あたり
    • 平均:1.7g/kg/day
    • 95%CI:2.2g/kg/day
  • 徐脂肪体重あたり
    • 平均:2.0g/kg/day
    • 95%CI:2.5g/kg/day

こちらは女性の研究より体重あたりのたんぱく質量はやや多くなっているが、徐脂肪体重あたりのたんぱく質必要量は同じくらい。

ようじゅ

冒頭のメタ分析とも大体一致する結果になっています

トレーニング日のたんぱく質必要量を求めた

そして同じIAAOを用いてトレーニング日のたんぱく質必要量を求めた研究も行われている。

トレーニング日のタンパク質摂取量を調べた。

被験者は筋トレ経験者で、ベンチプレス1RMは117 ± 17kgとかなりベテラン層。

  • 体重あたり
    • 2.01g/体重
    • 95%CI:1.62 – 2.38g/kg
  • 徐脂肪体重あたり
    • 2.31g/体重

こちらの研究では、これまでの研究よりもかなり高い値になっている。

筋肉を1gでも多く増やしたいという場合は、2.4g/体重という高たんぱく質を狙ってみるのもいいだろう。

ここまでのまとめ

ここまでに紹介した臨床研究を元にしたメタ分析とIAAO法の研究をまとめておこう。

研究被験者LowerCI平均UpperCI
2017年のメタ分析筋トレ経験者1.03g/体重1.62g/体重2.20g/体重
2019年の研究(女性)筋トレ経験者1.21g/体重1.53g/体重1.85g/体重
2017年の研究ボディビルダー(休息日)1.20g/体重1.70g/体重2.20g/体重
2020年の研究筋トレ経験者(筋トレ後)1.62g/体重2.01g/体重2.38g/体重

この結果から、細かいことは考えたくない人は計算の容易さからも2.0g/体重がおすすめ。

他の指標も示すとしたら、下記のようなものがいいだろう。

  • たんぱく質をあんまり摂りたくない人は1.6g/体重でOK
  • それなりにしっかり体づくりしたい人は2.0g/体重でOK
  • 筋肉を1gでも多くつけたい場合は2.4g/体重でOK

タンパク質摂取の歴史

ここで少したんぱく質必要量に関する歴史を振り返ってみよう。 [6]

19世紀は高タンパク質時代?

ドイツのCarl Voitは、ミュンヘンで行われた調査から、「中程度の肉体労働をする平均的な体重の成人は1日118gのタンパク質摂取が必要」と推奨した。

同じ頃、アメリカでもWilbur O Atwaterは「たんぱく質は100g以上、カロリーは3000kcal以上とるべき」と推奨した。

ようじゅ

当時は今と同じくらいの高たんぱく質が推奨されていたようです

20世紀に入ると、窒素バランスからもう少し少なくてよくね?となった

時代が進んで窒素バランス法が生まれると、118gの1/2で十分だと言われるようになる。

それどころか、屋外で活動的な生活を送っていない人ではさらに少量でも十分と主張されていたほど。

ようじゅ

この窒素バランス法の研究によって、推奨されるたんぱく質量が前の時代より大幅に下がりました

21世紀に入って、窒素バランスの大規模メタ分析が行われた

そして21世紀になり、今までためてきた窒素バランス法の研究がメタ分析された。

  • 平均は0.65g/体重
  • 97.5%の上限値は0.83g/体重
ようじゅ

この研究によって、たんぱく質必要量は0.83gと現代で推奨されているような値になりました

最近のIAAOを用いたもの

そしてIAAO法の普及により、筋トレをしていない人を対象にしたたんぱく質必要量も再検証されている。

男性を対象にしたもので、0.93g/体重 – 1.2g/体重が必要たんぱく質量だとされた。

これらの結果から、全く運動していない一般の人に対しては体重×1gの摂取で十分かもしれない。

今日の一言

ようじゅ

今日の一言はこちらの記事を元に話したものです

参考文献

1. Morton RW, Murphy KT, McKellar SR, Schoenfeld BJ, Henselmans M, Helms E, et al. A systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength in healthy adults. Br J Sports Med. 2018;52: 376–384.

2. Malowany JM, West DWD, Williamson E, Volterman KA, Abou Sawan S, Mazzulla M, et al. Protein to maximize whole-body anabolism in resistance-trained females after exercise. Med Sci Sports Exerc. 2019;51: 798–804.

3. Elango R, Ball RO, Pencharz PB. Indicator amino acid oxidation: concept and application. J Nutr. 2008;138: 243–246.

4. Bandegan A, Courtney-Martin G, Rafii M, Pencharz PB, Lemon PW. Indicator amino acid-derived estimate of dietary protein requirement for male bodybuilders on a nontraining day is several-fold greater than the current recommended dietary allowance. J Nutr. 2017;147: 850–857.

5. Mazzulla M, Abou Sawan S, Williamson E, Hannaian SJ, Volterman KA, West DWD, et al. Protein intake to maximize whole-body anabolism during postexercise recovery in resistance-trained men with high habitual intakes is severalfold greater than the current recommended dietary allowance. J Nutr. 2020;150: 505–511.

6. Rand WM, Pellett PL, Young VR. Meta-analysis of nitrogen balance studies for estimating protein requirements in healthy adults. Am J Clin Nutr. 2003;77: 109–127.

7. Humayun MA, Elango R, Ball RO, Pencharz PB. Reevaluation of the protein requirement in young men with the indicator amino acid oxidation technique. Am J Clin Nutr. 2007;86: 995–1002.

関連文献

8. Nunes EA, Colenso-Semple L, McKellar SR, Yau T, Ali MU, Fitzpatrick-Lewis D, et al. Systematic review and meta-analysis of protein intake to support muscle mass and function in healthy adults. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2022;13: 795–810.

9. Tagawa R, Watanabe D, Ito K, Otsuyama T, Nakayama K, Sanbongi C, et al. Synergistic effect of increased total protein intake and strength training on muscle strength: A dose-response meta-analysis of randomized controlled trials. Sports Med Open. 2022;8: 110.

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