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下っ腹の脂肪の落とし方

男性

ダイエットをしているけど、下っ腹の脂肪だけ最後まで残る

下っ腹の脂肪は最後に落ちますが、その段階までダイエットを続けるのがそもそも人間心理的に難しいという事実が問題の根幹にあります。

今回のポイント
  • 下っ腹の脂肪は落ちづらいので、本当に最後に落ちる
  • 同じダイエット法でずっと同じ摂取カロリーを摂り続けていると、いつかは体重減少が止まる
  • ダイエット終盤は、人間心理的にそもそもダイエットを続けるのが難しい
目次

下っ腹の脂肪は最後に落ちる

なんで下っ腹の脂肪は落ちないのか?

この問題の本質は、本当に低体脂肪率を実現するまでダイエットを続けることが難しいという事実がある。

ようじゅ

つまり男性だったらバキバキの体、女性だったらK-POPアイドルのような体型になる前に、ほとんどのヒトがダイエットをやめてしまいます

下っ腹の脂肪や女性の足やお尻というのは、実は脂肪が落ちづらい部位。

詳しくメカニズムを説明すると下記のようになる。

  • 脂肪の合成スイッチであるαアドレナリン受容体が多い
  • 脂肪の分解スイッチであるβアドレナリン受容体が少ない
  • 血流が少なく、脂肪が動員されづらい

実際に研究もいくつか挙げておきましょう。

脂肪動員は大腿部/臀部、腹部皮下脂肪、内臓脂肪の順で低い。

逆に内臓脂肪ではβ1、β2受容体の発現が多い

ヒトの貯蔵場所としては、皮下脂肪が正常。しかしそこの脂肪貯蔵能力が限界を超えると、内臓脂肪に蓄積し始める。

特にヒトの皮下脂肪(特に大腿部と臀部)では、α2Aアドレナリン受容体の発現が多い。

βアドレナリン受容体による脂肪分解は腹部で臀部の10-20倍も高い。

内臓脂肪のほうが血流が多い

ダイエットでは内臓脂肪が優先的に燃焼される

つまるところ、内臓脂肪は本来脂肪がたまるべき場所ではないので、ここに脂肪が蓄積されている場合は真っ先に使われる。

そして内臓脂肪が燃えきったら皮下脂肪が燃やされ始めるが、足やお尻の脂肪は最も燃えづらいということになる。

お腹は凹んだけど、浮き輪肉が残っているし足も痩せていない…というのは当たり前の現象。

特別なことをする必要はなく、それでもダイエットを続けていれば脂肪は自然と落ちる。

同じダイエットを続けていても体重が落ちなくなる理由

女性

肥満体型からダイエットを始めて、お腹は凹んだけど下っ腹の脂肪が落ちないまま数ヶ月が経過した…なにか特別なことをしないと落ちないんじゃない?

ようじゅ

これは陥りがちな罠ですが、浮き輪肉を落とすために特別な努力は不要。

とはいえ、ずっと同じダイエットだと体重が停滞しがちなのも事実だ。

同じカロリー量でダイエットを続けていると、いずれ体重の低下が止まる

ずっと同じダイエットだと、体重減少というのはいずれ止まってしまいます。

消費カロリーというのはダイエットが進むにつれて下がる。

なので摂取カロリーも下げ続けなければ、いずれ体重の低下は止まってしまう。

大幅な減量によって安静時代謝率は789kca減少した。

これは体組成の変化で説明されるよりも504kcalも大きかった。

このように代謝の低下には巷で言われる適応熱生産以外にも、”脂肪組織そのもの”がダイエットにより消滅したことによる維持コストの低下も含まれている。

つまり筋肉を維持していようとリフィードをしていようと、ダイエットが成功していて脂肪組織が無くなっていれば代謝は必ず下がる。

言い換えるなら、ずっと同じダイエットでずっと同じ摂取カロリーだと必ずどこかで体重低下は頭打ちになってしまうのだ。

摂取カロリーは徐々に減らさなければならない

この問題の解決法はいたって単純。

それはカロリー計算を見直すこと。

つまり、ダイエットが進むにつれてカロリーを減らさなければならない。

これは他の記事でもたくさん紹介しているので、そちらを参照してください。

ダイエットが進むほど、心理的に継続が困難になる

そして仮に摂取カロリーの調整がうまくいっていたとしても、そもそもダイエットの継続が困難になることが多い。

というのも、体重が減るごとに食欲が爆増することがわかっているから。

  • 体重が1kg減るごとにカロリー消費は20-30kcal/day減る
  • 体重が1kg減るごとに食欲は約100kcal/day増加する

つまり、脳が食べたい量と実際に食べれる量というのはどんどん大きくなっていく。

例えば、10kg痩せたときを考えてみよう。

このとき、代謝適応が体重1kgあたり30kcal起きたとすると、摂取カロリーは300kcal減らさなければいけない。

一方で、主観的な摂取カロリーは1000kcal増えることになる。

つまり、実際のカロリー制限としては1300kcalにも及ぶカロリー制限をしているような気持ちになるのだ。

実際にはここまで単純ではないかもしれないが、主観的なカロリーのギャップが増えるのは事実。

ダイエットが進むにつれて、ダイエットがどんどん辛くなっていくのは避けられない運命なのだ。

ダイエット終盤では「食への執着」が強くなる

そしてダイエットが進み主観的なカロリーのギャップが大きくなると、それは食への執着として表れるようになる。

実際に第二次世界大戦中に行われたミネソタ飢餓実験では、被験者が「食への執着」を示したことが報告されている。

飢餓実験という名前の通り、ガリガリになるまで減量をさせられた被験者たち。

ようじゅ

この研究では被験者は、何時間も食べ物について話し、レシピ本の写真を食い入るように見つめていたというエピソードが残っています

つまりダイエットが進むにつれて、食べ物について考えることが多くなる。

そしてこれは「ダイエットで脂肪が減る→脂肪から出ているレプチンが減る→脳に届くレプチン量が減る→脳が食欲を増す」というメカニズムで起こる。

つまり元をたどれば脂肪量が減ったことが食への執着が原因。

ダイエットが成功している限り、食への執着が増えるのは避けられない地獄なのだ。

実際にこの食べ物の執着というのはしぶとく、減量後のレプチン減少はダイエット終了から1年後でも戻らないとする研究もあります。[8]

食への執着が強いときの対処法

ダイエットが進むにつれて、食べ物に思考を奪われがちになる。

食べ物に関する思考が浮かんできたとき、その対処法を知らないといつかは負けてしまいます。

その対処法というのが、感情に対抗せず受け流す認知行動療法的な考え。

例えば「ケーキを食べたい」と思ったとき、どのように考えることが多いだろうか?

「ダイエット中なんだからケーキなんて食べちゃダメだ!」

「ケーキのことなんて考えないようにしないと!」

こんな感じで感情や思考に対抗しようとすると、99%の確率でいつか負ける日が来る。

正解は感情を受け流して、行動はしないようにすること。

「ケーキが食べたいと思っているなー」

その感情をむしろ味わって、自分がどのような感情を抱いているかを観察するのだ。

「やっぱりダイエット終盤になると、レプチンが減ってきているのか食への執着がすごいなー。脳が脂肪量の減少を感知して、食欲を増やして餓死しないようにしようとしているんだろうなー」

このように感情を否定したりせず、自分がどのように感じているのかをメタ認知することが重要。

実際に感情を受け入れるACTを取り入れたところ、体重減少量も大きかったうえに、リバウンドしづらかったことが報告されています。

感情を受け入れてもらったところ、そうでないグループに比べて体重が落ちリバウンドもしなかった

多くの人が食欲と戦って勝とうとするが、本来はそもそも戦わないのが勝ち。

食欲が浮かんでも合理的な理由で戦おうとしても、”理性に騙される”のがオチ。

というのも脳は「つい食べちゃう理由」をでっち上げるようにできている。

ようじゅ

さらに悪いことに、その理由のでっち上げに自分自身も気づかないようにできています。

ここら辺に関しては過去の記事でもまとめたことがあるので、気になる人はそちらを参照してください。

まとめ

今回は下っ腹の脂肪を落とす方法についてまとめた。

下っ腹の脂肪の落としかた
  • 同じダイエットでは、いずれ代謝低下で体重が落ちなくなる
    • カロリーを定期的に見直す
  • ダイエット終盤は食への執着が増加
    • 食欲とは戦わずに受け入れて観察する

下っ腹の脂肪は最後に落ちるので、ダイエットを続けさえすれば落とすことができる。

ようじゅ

実際に終盤のダイエットは食に思考を支配されるので難しいのは事実ですが、その感情を受け流して淡々とダイエットすればいつかは成功することができます

参考文献

1. Arner P. Differences in lipolysis between human subcutaneous and omental adipose tissues. Ann Med. 1995;27: 435–438.

2. Börgeson E, Boucher J, Hagberg CE. Of mice and men: Pinpointing species differences in adipose tissue biology. Front Cell Dev Biol. 2022;10: 1003118.

3. Wahrenberg H, Lönnqvist F, Arner P. Mechanisms underlying regional differences in lipolysis in human adipose tissue. J Clin Invest. 1989;84: 458–467.

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5. Chaston TB, Dixon JB. Factors associated with percent change in visceral versus subcutaneous abdominal fat during weight loss: findings from a systematic review. Int J Obes (Lond). 2008;32: 619–628.

6. Johannsen DL, Knuth ND, Huizenga R, Rood JC, Ravussin E, Hall KD. Metabolic slowing with massive weight loss despite preservation of fat-free mass. J Clin Endocrinol Metab. 2012;97: 2489–2496.

7. Hall KD, Kahan S. Maintenance of lost weight and long-term management of obesity. Med Clin North Am. 2018;102: 183–197.

8. Sumithran P, Prendergast LA, Delbridge E, Purcell K, Shulkes A, Kriketos A, et al. Long-term persistence of hormonal adaptations to weight loss. N Engl J Med. 2011;365: 1597–1604.

9. Forman EM, Butryn ML, Manasse SM, Crosby RD, Goldstein SP, Wyckoff EP, et al. Acceptance-based versus standard behavioral treatment for obesity: Results from the mind your health randomized controlled trial. Obesity (Silver Spring). 2016;24: 2050–2056.

関連文献

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